ソフトバンクとはDNAが似ている

千本会長は、「モバイルブロードバンドに特化した業者として成長を続けてきた」と振り返る。ソフトバンクは競争相手であり、「一番大事な顧客だった」(千本会長)が、iPhone 5の登場で「成長オプションにいくつかの可能性が出てきた」(同)。その1つがソフトバンクからの提案で、「それ以外にもいくつか提案があった」(同)が、最終的にはソフトバンクの買収提案を受けることに決めたという。

「(ソフトバンクとは)DNAが似ている。国際的に共通の1.7GHz帯によるLTEネットワークと、iPhone 5、特にテザリングと最高級のネットワークが合致したら、はるかに高い価値を生み出せる」と千本会長。「最良の選択であり、ソフトバンクの一員として、ナンバー1の地位を目指して全力を挙げて取り組んでいきたい」と強調する。

日本の携帯市場は変わるか?

この経営統合によって日本の携帯市場は、NTTドコモ、ソフトバンク+ウィルコム+イー・アクセス、KDDI(au)+UQコミニュケーションズという3つのグループに再編されることになった。シェアはそれぞれ44.7%、28.8%、26.5%となった。

逼迫する周波数帯域は、ソフトバンクは買収や新規割り当てによって帯域を拡大。孫社長は、ドコモとKDDIは従来からの800MHz帯を15MHz幅×2割り当てられているが、ソフトバンクは900MHz帯の5MHz幅しかなく、残り10MHz幅は既存の利用者の移行を進めていく必要があると指摘。新規割り当ての700MHz帯は、ドコモ、KDDI、イー・アクセスが10MHz幅ずつ割り当てられ、「やっと初めてイコールフッティング」(孫社長)であり、不満を述べる。 いずれにしても孫社長は、買収によってLTEに適した帯域をより多く手に入れたことになり、孫社長も「LTE元年」と強調し、競争を有利に進めていきたい考えだ。

電波行政を管轄する総務省は、新規参入を促進しようとしたり、新規割り当てをコントロールしようとしたりしていたが、結局は3グループに再編する形になった。新規参入があっても買収すればいいわけで、今後は同様の施策は難しく、かねてから課題とされていたオークション方式による割り当てなども検討していく必要があるだろう。ちなみに経営統合について、孫社長は決定した1日午後に総務省に報告。「あまり悪い反応ではなかった。いいことだと受け止めてもらったと思う」(同)という。