原口監督の語ってくれたこの特撮博物館開催の裏話は実にミラクルなものだった。館長を務める庵野秀明とは『実写版キューティーハニー』で一緒に仕事をしたという原口監督だが、庵野秀明は「マイティジャックを世界一愛している男だ」といい、原口監督自身もマイティジャックが大好きで、実際に撮影に使われていたマイティ号のミニチュアモデルをいつか復元したいと話していたそうだ。余談になるが、庵野監督作品「ふしぎの海のナディア」に登場した万能戦艦ニューノーチラス号って……つまりそういうことなのだろう。

特撮博物館の裏話を明かす原口監督

海と空を駆け巡る万能戦艦マイティ号。「戦え! マイティジャック」12話では敵に奪われ、首都東京に襲いかかる。ゴジラも真っ青のカタストロフィをテレビシリーズのわずか1話で!

特撮で使用するミニチュアモデルは、どうしても撮影で破損してしまう。火薬を使ったりする以上、それは避けられない。なので、撮影後には破損したミニチュアが片付けられていく。それを少年時代から父親の仕事の関係から撮影所に出入りしていた原口監督は、壊れたミニチュアをお願いして貰って帰っていたそうだ。おおらかな時代の話である。今回、特撮博物館のレジェンドアイテムのひとつ、復元された約3メートルのマイティ号は、原口監督が集めた破損したマイティ号の残骸が40%ほど、それを元に残りの部分を制作、復元したものだという。当時のミニチュアは木材とブリキの板金で作られていたそうだが、現在は当時と同じブリキ加工技術が残っておらず、できれば当時の技術で再現したかったが断念したそうだ。

そして驚きの秘話が飛び出す。マイティ号の復元は千葉県銚子の工場で作業していたが、昨年の東日本大震災で工場が全壊。ところがマイティ号は奇跡的にその時期は渋谷の工場に戻ってきていたため助かった。しかし、渋谷の工場も地震でかなりの被害を受け、原口監督もかなり精神的ダメージがあったという。その後、庵野秀明、スタジオジブリ、日本テレビの協力もあって特撮博物館の開催が決定し、そこに復元したマイティ号を展示するという目的ができたことで、何としても完成させる、という気持ちに繋がったそうだ。

特撮博物館は元はといえば、マイティジャックを愛する庵野秀明とマイティ号の残骸を所有し、いつか復元したいと考えていた原口監督の個人的な思い入れからスタートし、奇跡としかいいようがない経緯を経て実現したのだった。大きなことを成すには、やはり愛と情熱なのである。そこに少しだけ不思議な追い風が吹いた時、奇跡は起きるのだ。

来年にDVDがリリースされるマイティジャック号と現在発売中の『怪奇大作戦』DVD-BOX上巻

その「マイティジャック」と「戦え! マイティジャック」はいよいよ来年、DVDとして発売される。CGでは味わえないド迫力と、現代の規制では作れないドラマ&演出をぜひ味わっていただきたい。ゴジラやウルトラマンのように有名ではないが、妥協なき特撮魂と自重できないセンスオブワンダーは一級品。本年発売の怪奇大作戦とあわせて後世まで語り継ごう。

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