特撮、それは男のロマン。と、いうだけでなくこれはモダンアートのひとつだ! というわけで『エヴァンゲリオン』の庵野秀明が館長を務める「特撮博物館」が東京都現代美術館にて10月8日まで公開されている。
まあ、これがとにかく凄い。ゴジラにガメラに海底大戦争、歴代ウルトラマンまで、東宝、円谷プロ作品の撮影で実際に使われたメカのミニチュアモデルや小道具、着ぐるみ、マスクなどが山ほど展示され、さらに庵野秀明、平成ガメラの樋口真嗣、スタジオジブリの宮崎駿のコラボによる9分間の特撮映像「巨神兵東京に現る」の上映、さらに実際の特撮用ミニチュアセットの中で写真撮影ができるなど、これが1,400円なんて安すぎるだろ! と言いたくなる特撮ファンなら死んでも見ておきたい内容だ。
今回はその仕掛人のひとりである、ウルトラマンメビウスの監督も務めた特技監督、原口智生のトークショー&円谷特撮名作3本の上映会も合わせて取材してきた。原口監督の「特撮の申し子」と言わんばかりの少年時代からこの特撮博物館開催まで、まるで一本のシナリオのように繋がっているエピソードはまさに事実は小説より奇なり。特撮ファンは刮目せよ!
ということで、上映作品として原口監督がセレクトしたのは『ウルトラセブン13話 V3からきた男』『怪奇大作戦3話 白い顔』『戦え! マイティジャック12話 マイティ号を取り戻せ!(前編)』の3本。それぞれ特撮、ミニチュアの使い方が素晴らしく、それプラス人間ドラマという円谷作品ならではの魅力がある、とのこと。ただし残念ながら「ウルトラセブン13話にはアンヌ隊員が出ません!」など笑いを交えながらまずは作品の上映へ。いずれも選りすぐりの一話で、確かに特撮、ミニチュアの見せ方が抜群。ウルトラセブン13話ではウルトラホークと円盤の空中戦、怪奇大作戦ではユニークでシャレのきいた特技の使い方や超リアルなミニチュア自動車転落事故、そして『戦え!マイティジャック』12話では視聴率低迷が悪い冗談のような大空中戦に京浜工業地帯大爆破、マイティ号が霞ヶ関ビルに突っ込むという衝撃のヒキで終わり場内騒然という、見せ方を心得た監督ならではの観客を楽しませる構成はお見事だった。
特撮ヒーロー作品の金字塔「ウルトラセブン」13話は空中戦とキリヤマ隊長と盟友クラタ隊長の友情が見所。エメリウム光線とアイスラッガーを破られ、ワイドショットを使うセブンも必見だ |
米国の人気ドラマ「Xファイル」のモデルになったといわれる「怪奇大作戦」の3話では、レーザー技術の未来への期待感が語られる。その影にある悲劇と愛の物語が強く印象に残る |
言っても詮無きことだが、やはり特撮作品の面白さ、ダイナミズムは近年の表現規制によって大幅にスポイルされていると言わざるを得ない。今回、筆者は「戦え!マイティジャック」は初見だったのだが、これだけ破天荒にやれたら面白いよな、と思う反面「ここまでやっていいの?」という変な心理的ブレーキがかかってもいた。それは表現規制に感性が飼い慣らされて不自由になっている証拠でもあった。これはよくない。子連れのお父さんも見に来ていたが心の豊かさを育てるのは規制ではなく心の振り幅の大きさだと確信した。そういう意味ではおおらかな60年代、70年代の作品や、その時代に培われた技術をこうして親から子へ伝えていくことは大変有意義なことだと思う。これはホント、我々おじさん世代が頑張ってやるべきことのひとつではないだろうか。……続きを読む