5番目のポイントは「オーディオ」。前面、背面、底面の3カ所にあるマイクが正確にユーザーの声をとらえ、ノイズキャンセリングによって受話口からの声もクリアに聞き取れる。またWidebandオーディオという、声がより自然に聞こえるように音の分布を広げる新技術を採用している。ただし、これは通信キャリアの対応が必要で、iPhone 5発売時点で20社がサポートする予定だという。
最後に紹介したポイントは「iOS 6」。キーノートでのデモは、6月のWWDCでの概要説明のおさらいのような内容だったが、最後にSchiller氏が9月19日にリリースするというビッグニュースを発表した。
iPhone初のディスプレイサイズ変更が直面する問題
4インチディスプレイの採用は、単純にサイズを大きくしただけではない。Appleは同時に「より小さく」にも挑んだ。
iPhone 5本体のアルミニウム製の筐体は、高精度で削り出した後、インレイをはめ込む前に2台の29メガピクセルのカメラで撮影して1つずつ形を分析する。インレイは微妙にカットが異なる725種類ものパターンが用意されており、その中から最もフィットする1枚を選び出す。そんなわずかな誤差も排除する努力を費やして、Appleは「より良く、より小さく」を実現している。
4インチディスプレイの採用は、2つの問題をはらむ。これらについてAppleはキーノートであまり大きく取り上げなかった。1つは、手に持ったときのフィット感を優先して縦横の比率を変えたこと。もう1つはアプリ開発者の負担の増加だ。
3.5インチのiPhoneのディスプレイは、縦・横どちらでもバランスよくコンテンツを利用できるため、スマートフォンの黄金比と高く評価する声がある。新しい16:9のディスプレイは映画などには適しているものの、通常のスマートフォン利用においては縦向きで使いやすく、横向きで評価が分かれるところだろう。ただ、スマートフォンは縦向きで使うことが多いのも事実であり、そうしたデータがあるからこそ、Appleが比率の変更に踏み切ったと考えられる。
そうなると、今後は細長いiPhone 5のディスプレイに適したデザインがアプリ開発者の課題になる。しかし、Retina以前のiPhoneとiPad、Retina世代のiPhoneとiPad、さらに4インチのiPhoneと、アプリ開発者が対応すべきデバイスがこの2年間で急増している。iPhone 5は従来のiPhone用アプリを、元々の縦横比のまま表示する。引きのばしたりはしない。開発者が3.5インチ時代のiPhone向けに意図した通りの表示が維持される。とは言え、アプリの両端または上下に余白ができるので、ユーザーに与える印象は良いものではない。ユーザー本位で考えれば、iPhone 5に最適化させるのが開発者にとって唯一のソリューションになる。Android端末の断片化とは問題の深刻さ質が異なるが、Appleがきちんと舵取りせずに開発者の不満がくすぶるようなことになれば、将来の火種になりかねない。