―― ころんとして持ちやすいですし、冷たさがないから親しみを感じられますね。

村田氏「通常のカメラに比べると、縦横比が詰まった感じがしませんか(編注:横に短く縦に長い)。モックも正方形に近かったので、デザインのヒントはそこにあるかもしれないと指摘されて。

そこで改めて、意識して沈胴式ズームレンズでのデザインも描いてみたんです。すると、かわいさや暖かみ、女性が持ちやすいという感性に訴える要素が、ここに集約されていたんだと確認できました。

最初はユーザー視点だったので『なんとなくかわいい』と感覚で提案した要素が大きかったんです。でも、説得力があるデザインにするには、やっぱりしっかりしたキーワードや裏付けが必要なんですよね。感覚的な『かわいさ』を、いかに分かりやすい言葉に置き換えるかという作業もかなり大変でした」

前田氏「化粧品やアクセサリーがモチーフというこだわりを伝える上で、マーケティング側でも『メカっぽくない』が重要なキーワードになりました。カシオの強みは男性に好まれるメカ感なんですが、その正反対で女性向けのデザインを出したのは、かなりのポイントだと思いました。コンセプトから細部までこだわり抜いたデザインは、本当の意味での女性向けモデルになっていると思います」

―― EX-JE10は白/黒/ピンクの3色ですが、本体カラーの基準みたいなものはあるのですか?

村田氏「白と黒は最初から人気のある色でした。膨大なサンプル色から選んだり、『陶器のような白』を作るのは特に大変でしたね。ピンクも今までのマゼンタ寄りで濃いめの色味とは違っていると思います。少しコーラル系が入ったピンクはネイルやチークなどでよく見るので、たくさんの化粧品の中から、色作りのサンプルを出したりしました(笑)」

―― 過去にない色調だと、再現に苦労された部分も多かったでしょうね。

村田氏「本当は『もう少し白くしたい』とか『普通は金属きょう体にピンクを乗せるなら金属感を出したり、塗装の時はパールやメタリックを入れたりするよ』といったアドバイスもありました。

でも、自分が欲しかったのはやっぱり素直なピンクや黒や白でしたし、その上にトップコートやグロスを塗ったような光沢感を表現したかったんですよね。ですので、そこでは無理を言ってお願いしました」

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