カシオ計算機が9月14日に発売した、デジタルカメラ「EXILIM」シリーズの女性向けモデル「EX-JE10」と「EX-N10」、ユニセックス向け「EX-N1」。これまでの「EXILIM」のイメージは、クールでハイスペックな機能、そしてメカやガジェット好きの心をつかむというデザインだった。
女性読者が実際に使ってみた! 第一声は「超○○○○ーー!」体験レポートはこちら
そう考えるとほぼ正反対の、ころりとした暖かみのある形と手になじむ質感、レザー&ホワイトのナチュラルさや、キラキラのラメ&モード感、海外の洒落た文房具のようなポップ感とカラフルなトーンが並ぶ。その一方で、5倍ズームやプレミアムオート、メイクアップモード、ベストショットモードなど十分な機能と使いやすさを備えている。
この、今までにないEXILIMデザインを生んだのは、一体どんな人? そしてこのアイデアが生まれたきっかけは? そんな質問を携えて、商品企画の核を担った同社のデザインセンター プロダクトデザイン部 UIデザイン室の村田史奈氏、マーケティング調査やコミュニケーション面で企画に携わった同社の営業本部 戦略統轄部 QV・DI戦略部の前田麻友子氏に、EX-JE10を中心にお話を伺った。
私が欲しくなる「かわいい」デジタルカメラを作りたい
―― 女性向けデザインというEXILIMの中でも新しいモデルですが、このコンセプトが生まれた経緯を教えてください。
村田氏「私は普段、コンシューマ品目全般の部内で画面デザインなどを担当していて、実はカメラ専門のプロダクトデザイナーではないんです。ですが、半年に一度、職務を超えて好きな商品やデザイン商品企画を提案できる場があり、そこで提案したのが最初のきっかけです。
今のデジタルカメラって、高機能を強調したメカっぽいデザインが多くて、欲しいと思えるかわいい製品がなかなかなくて…。それで、自分も嬉しくなるような女の子らしいスタイルは作れないものかと思ったんです。最初のモック(デザイン試作)では、(化粧品の)コンパクトのような正方形の本体をキーホルダー的な感覚で気軽に持ち歩けたり、着せ替えケースと一緒にファッションとして楽しめるスタイルを提案しました。その提案を元に、製品化できることになったんです」
―― なるほど…。村田さんには、それまでのデジタルカメラのデザインにもの申す所がかなりあったと。
村田氏「そうですね(笑)。例えば、女性向けというカメラを期待して見に行ったら、ただ色だけがピンクという製品が結構あったんです。発色が良くても、もう一ひねり欲しいな…という製品もあったり。プロダクトデザイナーには男性が多いからかもしれませんが、男性の考える『女性向け』と自分の感覚に"ずれ"を感じる部分もあって。もう、完全にユーザーの気持ちで見てました」
前田氏「プレゼン会では各部門から多くの提案が出るんですが、一目見て『これは若い女の子ならではのアイデアだな』と新鮮な印象を受けました。カメラ部門で提案をする人たちからは、およそ出ないだろう衝撃的な考え方というか。それだけに賛否両論はあったみたいですね。でも現実味もあったし、やっぱり斬新さでは飛び抜けていたんですよ」
―― 確かに、デジタルカメラってアクティブさや機能をアピールする、スポーティやガジェットテイストなデザインが大半ですしね。
前田氏「コンパクトデジタルカメラは相当な種類が市場に出ていますが、一般的な商品企画では『いかに新機能を盛り込むか』が中心になりがちなんです。カシオはユーザーのライフスタイルを活かす提案が多い方だとは思いますが、今回ほど見た目を優先してライフスタイル提案を展開したのは初めてですね」
次ページ: デザインに自信を持てたきっかけは? |