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象印の圧力IH炊飯器フラッグシップモデルの「NP-ST10」。カラーはブラックのみ。全体的に丸みを帯びた本体で昆虫のような愛らしさがある

高級IH炊飯器最新機種レビュー第2弾は、象印マホービンが9月11日に発売するフラッグシップモデル「極め炊き NP-ST10」(通称「南部鉄器 極め羽釜」)。中央にかまどに引っ掛けるための鍔のある羽釜を模した独特な形状の内釜を、岩手県水沢・盛岡地域の伝統工芸"南部鉄器"で再現したのが最大の特徴の高級炊飯器だ。

本製品の炊飯の原理は、底面のIHヒーターのほかに、羽釜の羽の部分にあたる側面ににスプリング(ばね)構造の"羽釜ヒーター"を設置。ばね状のヒーターの上に釜の羽が乗ることで、釜全体が沈み込み、本体と内釜が密着して本体との間には空気断熱層が生まれる。この層が高い蓄熱・断熱効果を発揮し、釜内の熱が逃げるのを抑えて、かまどの原理と同様に高火力を維持して米を芯からふっくら炊き上げるというのだ。

また、内釜本体の形状は、ご飯の名店と名高い大阪・堺にある「銀シャリ屋げこ亭」の協力のもと、同店で使用されている釜を研究。その結果、底が浅く横幅が広い形状が熱効率がよいと結論付け、底が広めのすり鉢のような独特の形状が採用されたという。釜全体に熱を効率よく伝えることにより、沸騰前に起きやすい炊きムラを抑え、お米のα化を促進。激しい熱対流を生み出す効果もあり、大粒でハリのあるご飯が炊き上がるとのことだ。

内釜の素材として採用されている南部鉄器は発熱効率が良く、IH加熱との相性がよいという。さらに、鉄は蓄熱性が高く、羽釜炊きの高火力をしっかりと釜の内部に閉じ込めることができ、かまどで炊くような激しい熱対流を生み出すことで、理想的な食感に仕上げることができるというのだ。釜はひとつひとつ職人の手で溶解熱を鋳型に流し込んだ鉄器を、丹念に切削。

さらに摂氏800度の高炉で不純物を取り除くなど、伝統工芸の製法に忠実に仕上げられた職人の技が光る、最上級の鉄釜を使用しているといっても過言ではない。内側にはプラチナナノ粒子でさらにコーティングし、触媒作用により、水が弱アルカリ性に変化する効果があり、米表面のたんぱく質を分解。これにより水が芯まで浸透しやすくなり、ご飯の甘み成分を引き出すことができるという。

職人の技でこだわり抜いた"南部鉄器 極め羽釜"。まさにかまどの羽釜を連想させる素材感と独特の形。フッ素加工のコーティングは3年保証付きではがれや傷があった場合には無償交換してくれる

ずっしりとした重厚感のある内釜だが、厚みは釜底2.3mm、他は1.7mmと意外に薄い

一方、真空で密封できる機能などがある他社製品に比べてやや劣る感のあった保温性能は、新機種では内蓋をもう1枚加えることで改善。内蓋を二重にすることにより、蒸気の蒸発を抑制し、蓋側にあるヒーターから発せられる熱の影響も受けにくくなるため、保温したご飯の乾燥を抑え、潤いが保てるよう改良されている。加えて、炊飯時にはお米から発生する"おねば"を内釜に封じ込め旨みが逃げてしまうのが防げるほか、吹きこぼれも抑えられるので高火力を維持する効果もあるという。

本体には、底部にあるセンターセンサーの他に、左右2カ所ある羽釜センサー、ふたセンサー、圧力センサー、室温センサー、ふた開閉センサーの7つのセンサーを備え、釜内の温度を細かく検知し、火力だけでなく最適な保温状態も保てるよう制御されている。

釜の内部構造。釜内の温度を調節する7つのセンサーを備えている

シルバーのリング状の部分が"羽釜ヒーター"。内釜の羽に密着して側面からもしっかりと熱を加える

2枚の内ぶたを採用。騰中に発生する"おねば"も火力も内部に封じ込め、ふきこぼれを防ぐ

真上から見た本体。蒸気キャップは簡単に外して分解できる。蒸気を抑えたい場合は「蒸気セーブ」で炊けば、上記を抑えられる

本体側面。奥行があり、前方に突き出た格好で、ちょっと自動車っぽい

本体後方。後ろはあまり見えないとはいえ、あまりすっきりしない印象だ

内釜の重量の実測値は1856g。さすがにずっしりと重く、お米研ぎの水捨てや炊飯器へのセッティング時は女性にはちょっと力が必要だ