■連載「10万円炊飯器で炊く米は美味いのか?」
第1回 炊飯器に10万円、出せますか? (2012年8月29日)

日立アプライアンスのフラッグシップ機「圧力&スチーム 真空熱封 RZ-W2000K」。カラーは写真のメタリックレッドの他にパールホワイトがある。レッドは上品な光沢のある洗練されたカラーでインテリア性も高い

高級炊飯器の新製品レビュー第1弾は、日立アプライアンスが7月20日に発売した「圧力&スチーム 真空熱封 RZ-W2000K」だ。その名の通り、内釜を囲む内壁部分に、真空断熱層をもつ二層構造のステンレス容器を採用することにより、外部への放熱を防ぎ、高温を維持して美味しく炊き上げることができるのが特徴の製品だ。

日立アプライアンスによると、真空断熱は、火を囲み、熱を封じ込めて高温を保ちながら炊き上げることのできる"かまど"の原理から発想を得たもの。真空断熱層を設けた内釜を囲む容器は、魔法ビンメーカーであるサーモスと共同で開発した。

また、本製品の内釜には、溶かした鉄を高速で打ち込んで作る「対流大火力 打込み鉄釜」を採用。打込み鉄は、金属鉄と酸化鉄を含み、それぞれ発熱性と蓄熱性に優れているとのことだ。

金属鉄と酸化鉄を含み、それぞれ発熱性と蓄熱性に優れた「対流大火力 打込み鉄釜」。内釜には金粒子と炭素鋼を混ぜたフッ素コーティングの多層構造。内釜のコーティングは5年保証だ

内釜をセットした状態の内部構造

底面のIHコイルは最大1,400Wの高火力。平らな内釜を採用することにより、IHコイルと接する範囲が広がり、中央部が早く沸騰して対流を促す

さらに、打込み鉄の内側は熱伝導性の高い金粒子と遠赤外線を放射する炭素鋼を混ぜたフッ素でコーティングされた多層構造で、外側には防錆加工が施されている。わずか3mmの厚みながら火力を最大限に引き出せる工夫が加えられている。

内釜の形状は、底が広くどちらかというと四角いコンテナ状に近い。これは、底面を広くすることにより、熱を発する底部のIHコイルと接する範囲が広くなるため、内釜の中央部の沸騰が速くなり、対流を促すのが狙いだという。メーカーによる比較では、底が丸い形状だった旧機種(RZ-W1000K)では20分後ぐらいから温度上昇が始まっていたが、新機種では15分過ぎから温度が急上昇し、20分強で沸騰するという熱効率のよさだ。

内側に熱を留めておける真空断熱層は、当然ながら保温にも効果を発揮する。日立のIH炊飯器は従来から省エネ性が高く評価されていたが、新機種では「節電保温」機能を新たに搭載。真空断熱により、メインのIHヒーターを使わず、ふたの内側や内釜の結露を防ぐヒーターのみに通電し、ほとんど電気を使わずにご飯の温度を6時間程度、摂氏50度以上に保つことができる。

内ぶたは3枚構造。もっとも内側部分のフタに"オートスチーマー"機構を備え、炊飯時に発生する蒸気をためて蒸らし、保温時にスチームとして活用するため、排出する蒸気を抑える

また、スチームによる保温ができるのも日立の高級炊飯器の特徴。「吸水レスオートスチーマー」という機構を採用し、炊飯中の蒸気を水にして溜め、ヒーターで加熱して再蒸気化し、蒸らしや保温時にスチームとして再利用することが可能だ。これにより、炊飯中はほとんど蒸気を出さずに、スチームの力でご飯をしっとり保つことができる。実際に炊飯して、24時間保温した状態のご飯を食べてみたが、確かに水分の蒸発が少なく、"冷やご飯"を蒸し器で蒸し直したような、ふんわりとした食感に感じられた。

取り外しも分解も簡単な"大型蒸気キャップ"。そのまま水洗いできるのでお手入れもラク

炊飯メニューは、「白米・無洗米」、「五穀米」、「発芽玄米・玄米」の3種類からお米の種類を選び、それぞれ複数のコースで炊き分けを設定するといった操作の流れで、情報が整理されていてわかりやすく、初めて触った時でもマニュアルを読まずに迷わず操作できた。