PHA-1の音質をチェック

音質チェックは、筆者のリファレンス用ヘッドホン「オーディオテクニカ ATH-CK100PRO」で行った。バランスド・アーマチュア型ドライバーユニットを3基搭載する本機は、インナーイヤータイプではフラッグシップに位置づけられ、原音に忠実な再生で定評があるところだ。

最初に聴いた曲は、名盤Buena Vista Social Clubに所収の「Pueblo Nuevo」。キューバの空気が伝わるかのような、軽妙ながら熱気を含んだRuben Gonzalezのピアノが印象的な曲だ。2曲目は、Steely Danが2000年にリリースしたTwo Against Natureより「West Of Hollywood」をチョイス。いずれも音楽CDからApple LosslessでMacに取り込み、iPhone 4Sの「ミュージック」とMac mini(Mid 2011)の「Audirvana」で再生している。

Audirvanaの起動中にiTunesを起動すると、iTunesライブラリの曲をAudirvanaの機能で再生できる。Apple Lossless(44.1kHz/16bit)の曲も、自動的に96kHz/24bitにアップサンプリングされる

1曲目の「Puelbo~」は、最初のピアノのタッチの時点で空気感の変化を感じ取れる。解像感が一気に改善されたようで、iPhone 4Sから直接聴いたときよりライブな印象を強く受ける。この曲に関して言えば、Dockからのデジタル入力でも十分に"音の違い"がわかるだろう。

2曲目の「West~」は、Chris Potterが奏でるテナーサックスのソロ・パートで差が出る。背後では一定間隔でシンバルが刻まれているのだが、iPhone 4Sで直接聴いた場合は音のディテールがわかりにくいのに対し、Mac(PHA-1のUSB Audio入力/Audirvana)で聴けば余韻まで聞き取れる。Dockのデジタル入力で聴いても違いは明らかで、スネアの音の輪郭が鮮明に感じられるようになった。

音に関しての全体的な印象だが、低音域を強調するような"味付け"を抑制した、基本に忠実な音作りの姿勢が感じられる。こうするだけで音はよくなる、逆に言えばiPod/iPhone/iPadに足りない部分はここだ、けれど激しく自己主張はしない、とでもいうようなメッセージが込められた製品だといえる。ポータブルヘッドホンアンプ第1弾ということもあるだろうが、ソニーがPHA-1に設定した控えめなキャラクターは、iPod/iPhone/iPadの機能には満足だが音質面には納得できない、というユーザ層にアピールするだろう。

ただし、個人的にはUSB Audioとしても使えることのメリットが大きいと感じられる。Audirvana内蔵のアップサンプリングエンジンから出力される音は、一聴してわかるほどiTunes/Core Audioのものより解像感が高く、これはMac内蔵のステレオミニジャックでは手に負えない。iPhone 4Sを大きく上回るボディサイズ/重量ということもあり、"家庭内ポータブルヘッドホンアンプ"と認識したうえで導入したほうが、後々満足感を得られると考える。

シリコンベルトで"2段重ね"にするのもいいが……普段はUSB Audioとして活用し、いざというときに外へ持ち出すという使い方がスマートかも

満足感といえば、筐体デザインもそうだ。微細ヘアライン加工が施されたアルミケースは、シールド効果を高め外部ノイズを低減するだけでなく、独特の重厚感を醸し出している。亜鉛製のダイキャストバンパーも、ボリュームノブやヘッドホンのプラグ部分を保護するだけでなく、ヘビーデューティーな風合いを持たせることにひと役かっている。MacやiOSデバイスとデザインのテイストは異なるが、これもアリだな、そう感じる向きには所有欲を刺激する1台になることは確実だろう。

微細ヘアライン加工が施されたアルミケースは、男性的なカッコよさを感じさせる