ファイル/フォルダーを指定してバックアップ
バックアップツールの扱いは、コンピューターの進化と共に変化している。これまではリムーバブルメディアやテープといったストレージに、HDD(ハードディスクドライブ)のデータを待避させ、トラブルが発生した際には書き戻すというスタイルを採用してきた。しかし、オンラインストレージの台頭やクラウドコンピューティングの普及も相まって、「システム全体をバックアップする」という、これまでのスタイルが揺るいできたように感じる方も少なくないだろう。
2012年10月に発売されるWindows 8でも、これまで備えてきたフルバックアップ機能を全面にプッシュすることなく、ユーザーファイルのバックアップだけを強調してきた(フルバックアップ機能自体は残されている)。また、ユーザーファイルを維持したままWindows 8の設定を初期化する機能や、コンピューター全体を出荷状態に戻す機能を備えているあたりも、その変化を裏付けている。
いつ何時起きるかわからないトラブルに備え、フルバックアップを作成しなければならないのは今後も変化しないだろう。しかし、ユーザーファイルに焦点を当て、OSやアプリケーションは再インストールすればよい、というスタイルも求められているのではないだろうか。
今回はバックアップツール「HD革命/BackUp Ver.12」を使用し、重要なデータだけを常にバックアップする環境を構築。有事の際は復元操作を行わずとも、必要なファイルやフォルダーをバックアップデータから取り出せる「ExpandHDF」機能を用いるまでの手順を詳しく解説する。なお、ExpandHDF機能は、「HD革命/BackUp Ver.12 Basic版」には搭載されていないので、実際に試す場合は「同Standard版」「同Professional版」をお使い頂きたい。製品についての詳細は、同社のWebサイトを参考にしてほしい。
ベースとなるバックアップデータの作成
まずはバックアップの作成から取りかかろう。「HD革命/BackUp」シリーズでは、以前のバージョンから数クリックでバックアップを実行する「ワンステップバックアップ」を備えているが、最新版となる「HD革命/BackUp Ver.12」では、スケジュール設定を同時に行う「簡単スケジュール設定」機能が追加されている。
一見すると便利な機能だが、本操作で行うバックアップはシステムドライブを対象にした差分バックアップであるため、今回の目的である「重要なデータだけを常にバックアップする環境」にはそぐわない。そのため今回は「ファイルやフォルダーのバックアップ」を使用する。また、増分バックアップスケジュールを後から行うため、最初にユーザーファイル/フォルダーのフルバックアップから取りかかることにした。
基本的にはウィザード形式でバックアップ対象となるファイルやフォルダーを選択するわけだが、一つめの分岐点がバックアップモードの選択。通常はユーザーファイル/フォルダーを対象に自動検出する「項目一覧から選択する」か、自身の取捨選択する「ファイル、フォルダーを個別に選択する」のいずれかを選択しなければならない。
今回は後者を選択したが、Windowsの仕組みを把握していない方は前者を選択した方が簡単だ。なお、後者を選択した場合「NTUSER.DAT」などユーザー単位の設定情報を格納したファイルや一時ファイルを除外したことを示すダイアログが現れる。これはWindowsにおける仕様制限なので気にしなくともよい。後は画面の指示に従ってバックアップ設定を行えば、フルバックアップまで作業が進む(図01~14)。