DMR-HRT300のメニュー画面では、各機能が大きなボタンで表現される。いちどに表示できるボタンは9つ、それが3画面分用意され、必要に応じて切り替えるというしくみ。ボタンには機能を象徴するイラストにくわえ、「写真を取り込む」や「アルバムを作る」など一目瞭然な名前が付けられており、子どもやお年寄りでも迷わず目的の機能にたどりつけそうだ。

数ある機能のなかでもっとも作り込まれた感じを受けたのは、スライドショーを作成する「おまかせクリップ」。もっともよく使われると想定したのか、9つあるボタンのうち中央に配置され、リモコンにも「スタート」ボタンのすぐ横に専用ボタンを用意するという念の入りようだ。

DMR-HRT300のメニュー画面。デザインは現行のBDドライブ搭載DIGAシリーズとほぼ同じだ

よく使う「スタート」ボタンのすぐそばに「おまかせクリップ」ボタンが配置されている

作り方はかんたん。ボタンを押すと専用画面が現れるので、そこで「新規作成」を選ぶと、テンプレート選択画面が現れる。BGMも自動的に選択されるので、あとは写真が保存されているフォルダを指定し、そのなかからスライドショーに含める写真を選び、最後にテンプレートと写真の組み合わせを確認すれば、作業は完了。作業はわずか4ステップ、これだけで写真が回転するなどの表示効果を含むスライドショー(ムービー)が完成してしまう。

作成されるスライドショーは、コーデックがH.264/MPEG-4 AVC(約3Mbps/30fps)、解像度は720p(1,280×720ピクセル)で決め打ちされる。スライドショーの時間も約30秒とされているため、表現の自由度という点では未消化感も否めないが、飽きずに鑑賞できる長さとしては絶妙な配分に思える。

テンプレートは「ハミング&ダンス」や「ハッピーホリデー」など家庭向けテイストが中心だ

「おまかせクリップ」はわずか4ステップで作業完了。だれでもかんたんにBGM付きのスライドショーを作成し、SNSや写真共有サービス経由で公開できる

DMR-HRT300のココに期待

DMR-HRT300の特徴を思いつくまま挙げると、「光学ドライブの省略」、「スライドショーなど写真関連機能の強化」、「Qi準拠の無接点給電」、「スマートフォンとの連携」、「FacebookなどSNSとの連携」といったところだ。なかでも個性を際立たせているのは最初の2項目であり、これを評価する消費者は多いのではなかろうか。

光学ドライブの省略は、ひとつの大きな決断だと感じた。録画した番組は見終えたら消すという消費者が増えるなか、製造コストの高止まりと筐体デザインの固定化を招く光学ドライブは、いまやHDDをメインの記憶装置とするビデオレコーダーにとっては足かせとなっていた。その分、視聴できるコンテンツは減るが、「Hulu」や「アクトビラ」といったVODサービスがそれを補うと考えれば、消費者に不便を強いるほどではないはず。

フォトストレージならぬ「フォトレコーダー」を標榜した写真関連機能の強化策は、評価がわかれるところかもしれない。近年急速に浸透してきたスマートフォンでの写真撮影に着目し、迅速なワイヤレス転送に対応した点は良いが、HDDに保存できるのはJPEGが基本でRAWが非サポートという点は少々残念に思える。内蔵された500GBのHDD全域を写真の保存に使わないとしても、GB(ギガバイト)単位で消費するのは、ふだんRAWを扱うユーザだろうからだ。せめてパナソニック製品(LUMIX)のRAWだけでもサポートされていれば、中上級ユーザ層の反応は違ったと思う。

スマートフォン以外にも、DIGAなどの対応機器や各種Webサービスに写真や動画を送信できる

さらに言えば、「保存した写真のその後」についての配慮も欲しかった。パソコンであれば、DVD-Rに焼いたり外付けHDDにコピーしたり、といった処理に慣れたユーザも多いはずだが、家電製品ではそうはいかない。たとえば、HDD上の写真をクラウドに自動バックアップするオプションサービスが用意されていれば、突然災害に見舞われても思い出の写真は安心……といったアピールもできるだろう。

他のDIGAシリーズ同様、DLNAサーバ/クライアント機能「お部屋ジャンプリンク」を装備しているので、他のレコーダーで録画した地デジの番組も再生できる

光学ディスクの省略によるコンテンツ不足は、HuluやアクトビラなどのVODサービスである程度埋めることができる

ほかにも、スマートフォンから動画もワイヤレス転送できるようにしてほしいとか、筐体を正方形ではなく縦長にして設置スペースを減らしてほしいとか、あれこれ注文を付けたくなるが、製品のコンセプトには従来にない新鮮味がある(もっとも、筐体サイズはQiのコイルの位置合わせに可動コイル型を採用している都合上、難しいのかもしれないが)。

デジタル放送移行後、「見たら消す」レベルの録画は薄型テレビの付随機能になりつつあるなか、独立したレコーダーならではの新しいポジションを模索し始めた点は、もっと評価されて良いのではないだろうか。