高効率なDrMOSチップ「IR3550」で電源回路の発熱を60℃抑える

Thunderboltと同時に、むしろ実用面ではこちらの方が重要だろうポイントが、「Ultra Durable 5」の採用だ。Ultra Durable 5では電源回路が強化されたわけだが、どのように変わったのかをまず説明しておこう。

従来製品との違いを言ってしまうと、DC-DCコンバータ用のチップ(Driver MOSFET、DrMOS)にInternational Rectifier製の「IR3550 PowIRstage」を採用している点だ。DrMOSといえば、最近のマザーボードでは目玉機能として各社がアピールしており、GIGABYTEマザーボードでも数世代前から採用が始まっている。DrMOS自体は、これまでCPU電源回路を構成してきた複数のコンポーネントをワンチップ化したものである。具体的にはDriver ICとHigh Side用MOSFET、2個のLow Side用MOSFETを統合しており、チップ数で言えば4個必要だったのが1個で、実装面積でもほぼ1/4に縮小できるわけだ。

また、チップを減らすだけでなく、変換効率が高いというメリットもある。IR3550の変換効率は最大で95%。ロスによって熱となる容量も抑えられ、ケース内温度や他のパーツに与える影響も抑えられる。GIGABYTEの資料によれば、先代のLow RDS(on)MOSFET化の時点で伝統的な構成の電源回路と比べ40℃発熱を抑えられるのに対し、IR3550を用いた新回路はさらに20℃、伝統的な回路と比べれば60℃も発熱を抑制できるとアピールしている。そして、IR3550チップは1個で60Aまで供給できる能力を持ち、従来と比べ少ないフェーズ数で同じ容量のCPU電源回路を構成することができると言う。

電源回路は12フェーズほど確認できるが、IR3550チップの数は10個。フェライトコアには「P」のマークが付いており、これがUltra Durable 5対応の目印になるとのこと

IR3550チップ。3550Mと刻印されている。実際、ひと昔前の電源回路なら、フェライトコアひとつが複数の制御チップを従えていたものだが、本製品の場合はチップ数が少なくスッキリした印象を受ける

Ultra Durable 5を構成するその他の要素は、基本的にUltra Durable 4と同じだ。2オンス銅薄層や低ESR固体コンデンサ、フェライトコアチョーク、そしてUltra Durable 4で追加された耐湿性能を高めたPCB基板が採用されている。

ハイエンドとして従来モデルからの機能も継承

高性能な電源回路を備えた本製品は、オーバークロック面でもアピールしている。そのオーバークロック時に便利な機能として、オンボードスイッチ(電源、リセット、CMOSクリア)、デバッグLED、電圧計測ポイント(外部の計器と接続できる接点)、BIOS切り替えスイッチ(Dual UEFI BIOSの切り替えが可能)、そしてマルチGPU時のx16スロットに安定して電力を供給するための電源コネクタ「OC-PEG」などが挙げられる。

左にデバッグLED、縁に並ぶ接点は電圧計測ポイント、その上に電源、リセット、CMOSクリア用のオンボードスイッチ

ほか、CPU、グラフィックス、VTT、メモリ回路をデジタル化した「3D Power」は前モデルより継承しており、GA-Z77X-UD5HでもバンドルされていたIEEE802.11n無線LANとBluetoth 4.0対応拡張カードも同梱されている。

SATAポートの右はPCI Express x16スロットに電源を追加供給するOC-PEG。6Gbps×2、2Gbps×4のチップセットSATAに加え、奥には灰色のSATA 6Gbpsポートを1つ追加

IEEE1394aを追加するVIA VT6308Pチップ。バックパネルに端子は無く、ブラケットで追加する

7.1chオーディオチップのRealtek ALC898

1ポートのSATAと1ポートのeSATAを追加するMarvell 88SE9172チップ

USB 3.0ハブのVIA VL810。1チップで4ポート拡張でき、本製品では2チップ搭載している

OC狙いのユーザーは新機能とOC保証でWチェック

GA-Z77X-UP5 TH活用のポイントは3つだ。ひとつはThunderboltをはじめに豊富な機能が利用できる点。とくにThunderboltは今後を見越して、搭載製品を準備しておけばいざ普及した時に買い替えや拡張カードなどを追加すること無しに利用できる。ふたつ目はUltra Durable 5の低発熱な点を活用する使い方だ。発熱が少ないことは、静音化にもメリットがあるし、そもそも熱は変換ロスによるものが多く、省電力という点でも注目できる。さいごは、Ultra Durable 5をオーバークロックで活用する使い方だ。おそらく自作PCユーザーにはこれが本命だろう。高効率で低発熱、安定性の高い電源回路なら、CPUの性能を最大限引き出せるというものだ。

オーバークロックと言えば、GIGABYTEの代理店であるCFD販売が、GIGABYTEマザーボードを対象に「Over Clock Repair Warranty」をスタートさせた。通常なら製品保証の対象外となるオーバークロックによるマザーボードの故障が、Over Clock Repair Warranty対象製品に関しては特別に保証されるというものだ。対象製品のパッケージには、Over Clock Repair Warrantyのシールが貼られるということなので、オーバークロックにチャレンジシたい方はこれをチェックだ。