ストックフォトの審査基準とは
膨大な量のイラストが投稿されるiStockphoto。審査はどのように行われているのだろうか。
「世界で16人の審査員が、毎月1万8,000点から2万点のイラストを審査しています。審査基準ですが、求められるイラストのクオリティに関しては、年々上がっているという印象があります。ストックフォトがメジャーになればなるほど、世界中から応募者が増えレベルが下がっているという部分も正直あります。申し訳ないのですが、それをスクリーニングするためにも、審査基準が厳しくなっているという部分はあります」
具体的な審査内容や実情についても、Borton氏は語ってくれた。
「審査しなければならない作品数は膨大なのですが、iStockphotoのルールやコツを理解していない場合もあるので、新しい人の作品の審査ほど時間をかけます。iStockphotoの審査では、技術的な部分に関してはスタンダードな基準がありますが、クリエイティブな部分に関しては基本的に審査対象にはなりません。あくまでも個々のクリエイティブの質やスタイルに関してこちらが疑問符をつけることはないのです。例えば、花のイラストがあったとして、そのイラストのデータの解像度やサイズ、レイヤー数、オブジェクトの数などは審査対象となりますが、花が何色か、どのような技法で描かれているかなどは、審査対象とはなりません」
販売金額の設定にも、同様にしっかりとした審査基準があるいう。
「イラストの金額のも、クリエイティブな部分ではなく、データとしての側面から設定されています。そのデータにオブジェクトがいくつ入っているか、レイヤーが何層になっているのかなどが、データとしてのクオリティです。たとえ、非常に上手に描かれた花のイラストがあったとしても、オブジェクトがひとつだったり、レイヤー数が少なかったりした場合は、高い金額で販売することはできません」
ただし、例外としてシンプルなイラストでも、高い価格設定になる場合があるという。
「イラストというカテゴリーですが、その範疇は広く、壁紙やアイコンなどもイラストとして扱っています。これらの素材に関しては、シンプルでも優れたデザインで活用しやすいものは、高い価格となることがあります」
ストックフォトにおけるイラスト持つ可能性についても、Borton氏は言及した。
「写真のイメージが強いストックフォトですが、レイヤーごと、オブジェクトごとに購入できるベクターイラストは、ある意味、写真よりも素材として広く世界中のクリエイターに利用されています。写真のように爆発的な利用者数の増加はないですが、これからもクリエイティブでは活用されていくでしょう」
最後にBorton氏はイラストレーターやデザイナーに向けて、ストックフォトのメリットを語った。
「ストックフォトでは、クライアント向けの仕事はしなくて良いというメリットがあります。依頼でない作品を描くというだけで、自分のクリエイティブの自由度は上がります。色々なスタイルを試してみて、購入者や他の出品者といったユーザーの反応を見ることができるので、実験の場としても活用して欲しいですね」
撮影:糠野伸