フィヨルドに囲まれたノルウェー。前回はフィヨルドを中心とした雄大な自然を紹介した。今回はさまざまな個性を持つホテルを紹介する。素晴らしいスパ施設のある老舗ホテルから、絶景を拝める灯台ホテルまで、一度は泊まってみたいホテルがいっぱいだ。
ガイランゲルで4代続く老舗ホテル「HOTEL UNION」
まずは世界遺産クルーズの拠点、ガイランゲルに建つ「HOTEL UNION」を紹介したい。
「HOTEL UNION」はガイランゲルで4代続く家族経営の老舗ホテル。港から少し離れた高台に建っており、ホテルからは世界遺産ガイランゲルフィヨルドのすばらしい風景を満喫できるようになっている。現在のオーナーは5代目で、ホテルのハウスキーピング係として働いていた彼の曾祖母が、お金をコツコツ貯めてこのホテルの前身を買い上げたのだとか。ちなみにオーナーはイケメンで、女性に人気があるそう。
このホテルには見所がいくつかある。そのひとつが、地下にあるクラシックカーコレクション。オーナーの父が集めたという、1930年代を中心としたクラシックカーコレクションは、70年以上の月日が流れているとは思えないほど美しい。ホテルには専属のメカニックがいて、まめにメンテナンスをしているという。
1930年代のガイランゲルでは、村だけで50台のクラッシックカーが走っていた。当時はホテルの送迎などにクラシックカーを使用しており、このホテルでも港に到着した宿泊客をクラシックカーで送迎していたという。
コレクションの中には、フィヨルドの深い海底から引き上げたものもあるという。ガイランゲルでは、不要になったクラシックカーをフィヨルドに沈めていたらしい。なんともったいない……。ここに展示されている車は、普段なかなか見ることのできない逸品ばかりなので、ひとつひとつじっくり堪能してみてはいかがだろうか? ちなみに、このクラシックカーで宿泊客を送迎してくれることもあるとか。
フィヨルドを目の前にリラックス。磁場を考えながら作られたスパ
もうひとつの見どころはスパだ。ホテル内には、宿泊客は無料で使用できるプールもあるが、ここはやはり広いスパ施設をゆっくりと堪能したいところ。トルコ式、フィンランド式などの各種サウナ、ジャグジーなどを完備し、予約すればトリートメントも受けられる。
なによりおすすめなのが、スパで温めた体をゆったりとリラックスさせるスペース。さまざまな種類のスペースがある上に、それぞれ良い磁場を考えながら作られており、ひとたび座ってしまうと、思わずうとうとしてしまう人が多いという。ガイランゲルフィヨルドで世界遺産を満喫した後、スパでゆっくりと体と心を癒す……、そんなステイができるのだ。
「HOTEL UNION」では夏とともに冬のステイもすすめているという。ノルウェーの旅といえば夏が本番だが、冬はまた違った雰囲気を味わえるだろう。冬に宿泊する場合、スパもセットでお手頃な価格で提供しているので、ノルウェーの冬とスパを満喫しに来るのもいいかもしれない。寒い冬に一日中スパで過ごす……、という過ごし方も良さそうだ。
歴史ある「Fretheim Hotel」に、特別な「ヒストリカルルーム」も
次に紹介するのは、フロム鉄道が発着する小さな村、フロムに建つ「Fretheim Hotel」。フロム駅と港の目の前に位置し、部屋から港と山々を満喫できる。とくにレストランは前面がガラス張りで、表情を変えるフロムの風景を味わえる絶好のロケーションだ。
このホテルは1870年から続いており、改装と拡張を繰り返してきたというが、どことなくクラシックな印象を残している。ホテルの外観から見て左側の建物が新館で、こちらはモダンタイプの部屋を用意している。
旧館のほうは最近改装されたそうで、新館とはまったく違った雰囲気に驚く。各ラウンジやバンケットはアンティークな印象に仕上がっており、落ち着く空間になっていた。旧館の各部屋は、「ヒストリカルルーム」として特別な仕様を施されている。それぞれノルウェーのフィヨルド周辺の地名がついており、いずれも違うインテリアでまとめられている。各部屋にはシャワーとバスタブを完備し、猫足のバスタブが部屋の雰囲気を盛り上げる。アメニティーはロクシタンを用意している。
エコロジーも意識していて、部屋にテレビがない代わりにクラシックラジオを完備したり、冷蔵庫やミニバーを用意しない代わりに24時間オープンのロビーバーがあったりと工夫されている。「ヒストリカルルーム」の中には、さまざまな言い伝えが残る部屋もあるそうなので、ホテルのスタッフに聞いてみるとおもしろいだろう。
旧館の上階にはライブラリーを用意している。このライブラリーは宿泊客なら誰でも使うことができる。階段を上り、扉を開けると、白い木の壁がすばらしい特別な空間が現れる。
このライブラリーには、宿泊客が置いていった本がたくさんある。ここに置いてある本を借りたなら、返すときに1冊、自分が持ってきた本を寄贈してほしいとのこと。寄贈された本の中には日本語で書かれたものも。ホテルに宿泊する際、このライブラリーで特別な1冊を見つけ、そして他の誰かに読んでほしい1冊を置いていくといいかもしれない。
このホテルでは、ロングステイできるホテルをめざし、次のステップも考えているという。まだ改装中の場所もあったので、今後どのように変化していくのかが楽しみだ。