―― 使ってみたら粘着の強さが絶妙でした。テープに開発のこだわりを感じます。

村井氏「はい。ここが一番難しかったところですね。まず(粘着面とテープ表面の間に)剥離紙をつけない構造ということで、粘着材の選定には非常に時間がかかりました。また、テープ表面はペンなどで文字を書き込める素材にしたくて、これにも苦労しました。

通常、粘着テープは剥離紙をつけるか、つけない場合、粘着剤が付かないように表面処理をするんです。でも、表面処理をすると文字が書けなくなる。のりが付かないように、かつ表面に文字が書けることを両立するために、のりの種類と厚さ、テープ表面のシリコンの量を調整しながら、いくつもサンプルを作りました」

テープについては開発の段階で試行錯誤の繰り返しだった、と語る村井氏(写真左)。memopriの印刷テープ(専用ロール紙)には、3種類の幅と色がある。バリエーションを増やす予定もあるとかないとか…

尾澤氏「テープの色あいも、あれこれ調整しましたねー(村井氏を見て笑う)。最初に見せてもらったテープは、あまりにも色が……」

村井氏「ギトギトで(笑)」

尾澤氏「あのときは部署同士でかなりやりとりしましたね。このピンクが良いとか、この黄色が良いとか」

村井氏「あとはテープ交換の仕方、操作方法といった設計面でも、決まるまで熟慮しました。テープを入れる場所は見やすく分かりやすく、お客様はフタを閉めるだけで良いと。そこまで絞り込んでいって、どういった構造が良いのかと、そこはとても大事に考えました」

尾澤氏「誰が使っても面倒を感じないように、ですね」

各モデルとも、本体の外側の小窓から印刷テープの残量を確認できる(写真はMEP-U10)

―― 側面の小窓からテープの残量が見えるデザインになっていますね。

尾澤氏「これも激しい議論がありました(笑)。小窓がなければコストを下げられますからね…」

村井氏「設計の立場から言うと、小窓からロール紙まで少し距離があるんですよね。この程度の小窓で、果たしてテープ残量が確認できるのか、という懸念もありました」

―― でも最終的に、製品を手にしたとき「小窓がある。芸が細かい」というのが伝わってくるデザインになりましたね。テープの仕様が決まるまでには、どのくらいの期間を要したのでしょうか。また、印刷後のテープを手で切るようになっていますが、オートカッターは考えなかったのでしょうか。

村井氏「テープの完成までには1年ちょっとかかりました。ずっと試行錯誤の繰り返しです」

尾澤氏「カッターにも苦労しましたね~」

村井氏「今回はプリントして、手で切ってという一連のイメージが最初にありました。"カッターの歯"の形状や角度によって、確実に切れるというノウハウはあるんです。でも、実際にお客様が感じる切れ味、切った感触を大事に考えたとき、そう簡単には決められません。やはりいくつもサンプルを作って試しました。

オートカッターにする方法もありましたが、今回のテープは剥離紙がないタイプなので、オートカッターだと切った後にテープが本体に貼り付いてしまう可能性があったんですね。そんなことも含めて、手動のカッターが最善と判断しました」

MEP-B10とMEP-U10のカッター部分と印刷テープの装着部分

MEP-T10のカッター部分と印刷テープの装着部分

―― ボディはほどよい感じで丸みを帯びていますね。モデルによって本体カラーの種類が違うなど、製品にテーマみたいなものはあるのでしょうか ?

尾澤氏「カラーバリエーションに関しては、明確な意図がありました。Bluetoothモデルはスマートフォンに合うように高級感のある落ち着いた色合いに。ほかの2モデルは電子文具のカジュアルさを表現した色味になっています。あと、デザインに関連することではmemopriのロゴなんですが、丸いフォルムをイメージさせる書体を使っています。"i"の文字の"点"はテープを連想させるひし形です。ロゴ全体で製品本体とテープの特徴を表現しています」

―― memopriのネーミングはすんなり決まったのですか ?

村井氏「はじめは"メモプリンター"や"メモプリ"と仮称で呼んでいました。改めてネーミングの候補を挙げていったんですが、やはり"memopri"が一番ピンとくるということだったんです」

尾澤氏「製品の愛称は浸透するまで時間がかかりますし、浸透するような愛称でないと、お客様から認知もしてもらえません。愛称から製品がイメージできるのって大事なんですよね」

―― 製品のフタが同じ色なのは意図的ですか ?

村井氏「これにより、シリーズの統一感を出しています」

尾澤氏「あとはよく手で触る部分なので、汚れが目立たないようにということで、この色になりました」

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