―― 使ってみたら粘着の強さが絶妙でした。テープに開発のこだわりを感じます。
村井氏「はい。ここが一番難しかったところですね。まず(粘着面とテープ表面の間に)剥離紙をつけない構造ということで、粘着材の選定には非常に時間がかかりました。また、テープ表面はペンなどで文字を書き込める素材にしたくて、これにも苦労しました。
通常、粘着テープは剥離紙をつけるか、つけない場合、粘着剤が付かないように表面処理をするんです。でも、表面処理をすると文字が書けなくなる。のりが付かないように、かつ表面に文字が書けることを両立するために、のりの種類と厚さ、テープ表面のシリコンの量を調整しながら、いくつもサンプルを作りました」
尾澤氏「テープの色あいも、あれこれ調整しましたねー(村井氏を見て笑う)。最初に見せてもらったテープは、あまりにも色が……」
村井氏「ギトギトで(笑)」
尾澤氏「あのときは部署同士でかなりやりとりしましたね。このピンクが良いとか、この黄色が良いとか」
村井氏「あとはテープ交換の仕方、操作方法といった設計面でも、決まるまで熟慮しました。テープを入れる場所は見やすく分かりやすく、お客様はフタを閉めるだけで良いと。そこまで絞り込んでいって、どういった構造が良いのかと、そこはとても大事に考えました」
尾澤氏「誰が使っても面倒を感じないように、ですね」
―― 側面の小窓からテープの残量が見えるデザインになっていますね。
尾澤氏「これも激しい議論がありました(笑)。小窓がなければコストを下げられますからね…」
村井氏「設計の立場から言うと、小窓からロール紙まで少し距離があるんですよね。この程度の小窓で、果たしてテープ残量が確認できるのか、という懸念もありました」
―― でも最終的に、製品を手にしたとき「小窓がある。芸が細かい」というのが伝わってくるデザインになりましたね。テープの仕様が決まるまでには、どのくらいの期間を要したのでしょうか。また、印刷後のテープを手で切るようになっていますが、オートカッターは考えなかったのでしょうか。
村井氏「テープの完成までには1年ちょっとかかりました。ずっと試行錯誤の繰り返しです」
尾澤氏「カッターにも苦労しましたね~」
村井氏「今回はプリントして、手で切ってという一連のイメージが最初にありました。"カッターの歯"の形状や角度によって、確実に切れるというノウハウはあるんです。でも、実際にお客様が感じる切れ味、切った感触を大事に考えたとき、そう簡単には決められません。やはりいくつもサンプルを作って試しました。
オートカッターにする方法もありましたが、今回のテープは剥離紙がないタイプなので、オートカッターだと切った後にテープが本体に貼り付いてしまう可能性があったんですね。そんなことも含めて、手動のカッターが最善と判断しました」
―― ボディはほどよい感じで丸みを帯びていますね。モデルによって本体カラーの種類が違うなど、製品にテーマみたいなものはあるのでしょうか ?
尾澤氏「カラーバリエーションに関しては、明確な意図がありました。Bluetoothモデルはスマートフォンに合うように高級感のある落ち着いた色合いに。ほかの2モデルは電子文具のカジュアルさを表現した色味になっています。あと、デザインに関連することではmemopriのロゴなんですが、丸いフォルムをイメージさせる書体を使っています。"i"の文字の"点"はテープを連想させるひし形です。ロゴ全体で製品本体とテープの特徴を表現しています」
―― memopriのネーミングはすんなり決まったのですか ?
村井氏「はじめは"メモプリンター"や"メモプリ"と仮称で呼んでいました。改めてネーミングの候補を挙げていったんですが、やはり"memopri"が一番ピンとくるということだったんです」
尾澤氏「製品の愛称は浸透するまで時間がかかりますし、浸透するような愛称でないと、お客様から認知もしてもらえません。愛称から製品がイメージできるのって大事なんですよね」
―― 製品のフタが同じ色なのは意図的ですか ?
村井氏「これにより、シリーズの統一感を出しています」
尾澤氏「あとはよく手で触る部分なので、汚れが目立たないようにということで、この色になりました」
次ページ:こんな使い方が便利 ! そして要望あれこれ… |