カシオ計算機の電子文具「memopri(メモプリ)」は、すばやいメモ印刷が可能な小型プリンタ。粘着力のある専用ロール紙に印刷し、付箋紙のように貼ったりはがしたりできるのが特徴だ。このありそうでなかったmemopri、どうやって生まれ、どのように活用されているのだろうか。
現在リリースされているのは、タッチパネルによる手書き入力およびPCとUSB接続して印刷する「MEP-T10」、Android端末とのBluetooth接続およびPCとUSB接続して印刷する「MEP-B10」、PCとUSB接続して印刷する「MEP-U10」の3モデルだ。中でもMEP-B10は、2012年6月に「第21回日本文具大賞」の優秀賞に輝いた。
―― 日本文具大賞の優秀賞、受賞おめでとうございます。どのあたりが審査員にアピールできたと思われますか。
尾澤氏「製品を出品する際は、メーカー名を伏せ、限られた字数でアピールするという決まりがありました。MEP-B10の場合は、気軽に貼って剥がせて再利用できる便利さ、スマートフォンの特長を活かしたワイヤレス印刷の便利さと、音声認識の文字入力を利用した使い方を訴求しました。結果的にその3点がトータルで評価されたように思います」
―― 製品の発想が生まれた背景を教えてください。
村井氏「弊社ではこれまでも『NAME LAND』(1991年発売開始)などのラベルライター製品を展開してきましたが、"素早く手早く簡単に印刷ができる"新たな製品を形にしたいということで、良いアイデアを模索していたんです。
その頃、ちょうど営業でも似たような商品案が出ていました。例えば携帯電話のメールの一文、「何時から会議」など、それだけを印刷してノートに貼れるようなもの。そこで両者の意見が合ったことが、開発のきっかけになりました」
尾澤氏「営業サイドでは、ラベルライターのような恒久的なものではなく、気楽に貼って剥がせる感熱紙タイプのような製品のラフ案を提出しました。開発でも同じようなアイデアを持っていて、その後、技術面でもクリアできる見通しが立ちました」
―― 貼って剥がせる商品というアイデアは、日々の仕事の中から生まれた発想なんでしょうか。
尾澤氏「はい。それまでは付箋紙をよく使っていたんですが、上からテープで補強しなきゃいけないケースなども多々あって。でもそれって手間じゃないですか。あと、自分の手書きの文字が汚くて嫌いなので、きれいに印字できる製品があったらいいな、という思いがずっとありました」
―― 3モデルに分かれた経緯は ?
村井氏「お客様の生活スタイルに合わせて選択いただけるように、必要な機能だけ選べるように配慮した結果が、この3モデルのラインナップになりました。Bluetooth接続のワイヤレス印刷などは、スマートフォンを持っていないと使えないですし」
尾澤氏「やっぱり、お値段の問題もありますからね。あまり使わない機能を搭載した高価な製品になってしまうのを避けたかったのもあります」
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