さよなら「Windows Home Server」
「Windows Home Server」は、個人でも大容量ストレージを使用するようになり、NAS(Network Attached Storage)のニーズが高まっていた2007年に登場したMicrosoftの個人向けサーバーOSである。Windows Server 2003 R2をベースにエンタープライズ向け機能を削減し、ファイルサーバーや各クライアントOSのバックアップサーバーとして活用されてきた方もおられるだろう。
昨年にはベースOSをWindows Server 2008 R2に変更した「Windows Home Server 2011」もリリースされたが、OSとしては単独販売されなかったため、広く知れ渡ることはなかった。それでも秋葉原やオンラインショップからは、DSP(Delivery Service Partner:販売代理店)版を購入可能。本来の役割であるサーバーOSとして、もしくは疑似的なクライアントOSとして活用している方も多いのではないだろうか(図01~02)。
かく言う筆者は、Windows Server 2003からWindows Server 2008 R2と使ってきたため、Windows Home ServerおよびWindows Home Server 2011はレビューとして評価するにとどまっていたが、個人向けファイルサーバーOSとしては十分評価できる製品だった。本来ファイルサーバーの管理にはアクセス権限やストレージスペースの監視といった作業が欠かせないものの、Windows Home Server/同2011は各作業を簡易化する機能を備えていたため、コンピューターに対する知識が浅い方でも使えるサーバーOSとして評価されるべきだろう。
しかし、Microsoftはその役割は既に終えたと判断したようだ。以前から同社はSOHO/中小企業向けのサーバーOSとして、Windows Small Business Serverを提供している。先頃同OSの公式ブログで発表された記事では、Windows Small Business Serverの後継OSとなる「Windows Server 2012 Essentials」を発表。複雑化したサーバー向けOSのラインナップを整理し、Windows Server 2012の下位エディションに加えたのである(図03)。
Windows Server 2012の話は冗長になるため割愛するが、興味深いのがWindows Server 2012 EssentialsのFAQをまとめたPDFファイルの存在。こちらのリンクからダウンロードできる同ファイルには、Windows Home Serverの次世代バージョンを開発しないことが記載されているのだ(図04)。
これに関して、Windows Home Serverの公式ブログに変化が見られないあたりに哀愁を感じさる。商業的には失敗したWindows Home Serverだが、個人向けサーバーOSとしては実に優れた製品だ。特に物理的に異なる環境にバックアップを作成したいユーザーには、唯一無二の純正品(非サードパーティ製品)だったのである。
前述のWindows Server 2012 Essentialsは25ユーザーまでしかアカウントを作成できず、425ドルという個人では手を出しにくい価格設定のため、これまでWindows Home Server/同2011が担っていたバックアップソリューションは事実上なくなってしまう。同PDFファイルによると、2013年12月31日でOEMチャンネルによる販売は終了となるため、現行ユーザーは何らかの代替手段を模索しなくてはならないだろう。
阿久津良和(Cactus)