従来の腕時計にはないケース表現に成功

今回、「CITIZEN×TOYOTA 86」の企画を担当したシチズン時計商品企画部、吉川茂樹氏は、製品の魅力について次のように語る。

「『86』が持つ優美な曲線と曲面美、そして見る角度によって色調が変化する車体の塗装表現。それらを時計として織り込み、『腕を飾るプロダクト』としてまとめ上げたところですね。ケース本体のデザインには、実車を思わせる曲面を多用しています。これにより、時計を動かしていくと、映り込んだ光がその曲面をゆっくりと動いて行く。それが、疾走する車体に周囲のシーンが映り込み、後方へと流れていく光景とオーバーラップするんですよ。この塗装によるケース表現は、従来の腕時計にはない色彩を持ち込むことができたと思います」(吉川氏)

「CITIZEN×TOYOTA 86」のケースは、従来の腕時計にはない色彩を持ち込んだ

一方、腕時計と車という、個人が所有できるプロダクトでは最大と最小ともいえるコラボは、そのスケールの違いから、デザインする上で苦労の連続だったともいう。

「クルマのディテールを腕時計に落とし込む際のデフォルメ具合も、何種類か試作をしながら決めていきました。"T"マークをモチーフにしたパターンの文字板の演出はとくに苦労しましたね。ちなみに、ベゼル部分のタキメーターは、トヨタサイドから『86』のメーター周囲の意匠を表現として入れ込みたいとの意向があり、当社よりデザインを提案して採用に至ったものです」(吉川氏)

時計とクルマ。このスケール感の差がデザイナーを悩ませたという

「CITIZEN×TOYOTA 86」には、レッド、ホワイト、ブラックの3モデルがラインナップされているが、人気の高いレッドはすでに入手困難との噂も。

「レッドは一番スポーツカーらしいカラーリングなのだと思います。3色のサンプルが完成した時も、自分も一番『欲しいっ!』と思ったのがレッドでした。金属ケース部分の黒と、塗装部分の赤のバランスが心地良いのだと思います。それに、スポーツカーのオーナーである自分を表現するカラーとして、鋭い光沢を放つレッドがマッチしたのではないでしょうか」(吉川氏)

個人的にはホワイトにも強く引かれる。が、「やっぱりレッドが欲しい!」という人は、「CITIZEN×TOYOTA 86」が再登場するその日を、いまから心待ちにしようではないか。