――歌詞の中で「アリア語」が使用されていますが、このあたりの世界観は「グリオットの眠り姫」の流れと思ってよいのでしょうか?

霜月「そうですね。今回のアルバムは、『グリオット』と同じ世界観になっています。ネタバレというほどでもないのですが、主人公になっている2人のキャラクターの名前は、女の子がセシアラで男の子がフォアゲイトなんですけど、実はこれ、『グリオット』の主人公たちの親なんですよ。そういう意味でも完全に繋がっています」

――『グリオット』の前日譚とでもいう感じでしょうか?

霜月「このアルバムのほうが『グリオット』よりも過去の話になっていて、この流れの中に『グリオット』のストーリーが入ってくるという感じですね。なので、世界観は共通ですし、"アリア語"も使用しています。そういう意味では『ティンダーリアの種』からも繋がっているわけですが、これまでから私の作品を聴いてくださっているファンの方には、アリア語が出てきた時点で、『同じ世界のお話なのかな?』ぐらいは想像していただけると思いますし、2人の名前を聞いたら完全にわかるんじゃないかなって思います。そのほかにもいろいろと深読みできる要素を入れているのですが、この作品だけでも独立した話として成立させたかったので、今回はブックレットにストーリーも載せることで、物語が全然わからない人でも理解してもらえるような作りにしています」

――ブックレットにはけっこうなガッツリと載っていますよね

霜月「けっこう載せていますね(笑)。なので、これを読みつつ、曲を聴いていただくと、いろいろな要素に気づいてもらえるのではないかと思います。独立したファンタジー作品としても楽しんでもらえますし、『グリオット』を知っている人なら、さらにおいしいところもあるんじゃないかなって感じです」

――メロディ自体は同じでありながら、アレンジによって各曲のイメージが大きく変わっていますよね

霜月「同じメロディなんだけど、アレンジを変えることで、皆さんの個性がすごく出ていると思います。メインメロに関しては、どこかしらに必ず使われてはいるのですが、その出し方にもすごく個性が出ている。皆さんのアプローチが全然違っているので、まとまって聴くと、すごく面白くなっています」

――そのあたりが、曲によってクリエイターの方を変えた醍醐味と言えるのではないでしょうか?

霜月「先ほどもお話ししましたが、メインメロに限らず、同じメロディが違う曲でけっこう使われていたりするんですけど、作りながら、いつの間にか自分が作ったメロディであることを忘れている人もいて(笑)。『あれ? これ俺のメロ?』みたいな感じが、皆さんそれぞれにあったのですが、そういったところからも全編通しての統一感のようなものが出てきていると思います」

――『グリオットの眠り姫』と近い部分もありますよね

霜月「『グリオット』とは世界観だけでなく、メロディ的にすごく絡ませています。スタッフさんが聴いたときに、『これ、聴いたことがあるメロディだ』って、すぐにわかるレベルでも入っているので、昔から追いかけてくれているファンの方なら、それ以外のいろいろと面白い要素にも気づいてもらえると思います」

――序章から終章まで全6曲の組曲ですが、これを通して歌うとなると大変ですね

霜月「大変だと思います。というより、歌えるのかな(笑)。アリア語もたくさん入っていますし、コーラスもけっこう複雑に重なっていますから……歌うことになると本当に大変そうです。でもライブでやってみたいですね」

――今回のジャケットはchibiさんのイラストですね

霜月「chibiさんには今回初めてお願いしたのですが、もともと私と日山さんの一目ぼれみたいな感じで、最初はネットで発見して、イベントの会場で実際にお会いしてお願いしました。すごく世界観を汲んでくださって、イラスト自体でも作品の世界観を作っていただけたので、曲を作るうえでもすごくモチベーションが上がりましたし、実際に作曲家たちにも、『こういうイメージです』ってイラストを見せました(笑)。やはりイメージを共有する上で、絵があることはすごく大きいので、とてもありがたかったです」

――「悪夢」や「狂気」といった曲タイトルはちょっと想像しにくいジャケットイラストですが……

霜月「実はジャケットを開いていただくと『悪夢』な感じになっていたりします。表向きはすごく幸せそうなCDに見えて、ウラを返すと実は……(笑)。これがやりたくて、chibiさんにそのようにお願いしました」

――ジャケットはすごく幸せそうな2人が描かれていますが

霜月「曲で言うと、2曲目、3曲目ぐらいが幸せな感じで、幸せなのはそこだけです(笑)。組曲を作る以上、こういったメリハリがないと面白くないと思うんですよ。なので、暗いところから始まって、ちょっと明るくなって、また落ちる……いわゆるジェットコースター的なストーリー展開になっています」

ジャケットの2人は幸せそうだが……

――『グリオット』に繋がる物語というお話でしたが、そのまま繋がるわけではないですよね?

霜月「ストーリーで言えば、『グリオット』は4章のところに挟まる感じです。音的にもそのあたりを表現したくて、『グリオット』のリミックスのようなメロディが入っていたりもします。『零れる砂のアリア』は、『グリオットの眠り姫』に繋がる話というよりは、あくまでも主人公2人の一生を描いた組曲になっています」

――そういう意味でもぜひとも通して聴いてほしい感じですね

霜月「もちろん通しで聴いていただきたいですし、逆に言うとピックアップするのが難しい。以前、ラジオでどこを流しますかって聞かれたとき、どこを流したらいいんだろうって、ちょっと悩みました(笑)。全体を聴いていただくことで伝わるものがある作品なので、冒頭だけを聴いて全体はイメージできない……みたいなところもあります」

(次ページへ続く)