こうした音楽サービスも米国でモバイルインターネットが普及しはじめたため、モバイルからの利用が増えてきたという。インターネットラジオを標榜するPANDORAの場合、自動車に乗っているときに利用するユーザーも少なくないため、モバイル比率はかなり高いという。
専用アプリを使うことで、大量の音楽があるサービスであっても、ユーザーは自身の好みの音楽だけを選ぶことが可能となる。このあたりが、一方向のみのラジオやテレビといった放送とは違う部分だ。しかも、通信さえ可能なら、ダウンロードなどの作業も不要だし、ストレージ容量などを管理する必要もない。単純な音楽のオンライン販売とも違い、登録さえすれば、通信が可能な限り、持ち歩けるスマートフォンで自由に音楽を聴くことができるわけだ。
かつては、インターネットで音楽を流すことに難色を示していた音楽産業も、CDの売り上げが減ると、オンライン販売やこうした無料の音楽サービスが新たな収入源として見えるようになってきた。モバイルでのインターネットアクセスが可能になり、ユーザーが増えることで、音楽産業の顧客は、「テレビ、ラジオなどの放送で音楽に触れ、CDを買う」というあり方から、「スマートフォンで広告付きで音楽を聞いて、サービスに対価を払う」といった方向に大きくシフトする可能性が出てきたわけだ。
米国でモバイル支払いサービスは立ち上がるか?
スマートフォンなどの携帯電話は、PCよりもユーザーに近いところにある。常に持ち歩くことになるからだ。そうなれば、ちょっとした検索なども携帯電話で行うし、可能なら、これで支払いなどもしたいと思うようになる。日本だと、いわゆる「おサイフ」携帯があるため、交通から少額の購入まで、携帯電話で済ませることが可能だが、海外ではまだ、そこまでいっていない。
GoogleがWalletというオンライン支払いサービスを始めたが、まだまだこれからである。米国では、ビジネスになりそうな見込みが高いと、普及も早い。人口も多いため、国全体としての購買力もある。このため、すでに日本が先行している携帯電話の支払いサービスなどもあっという間に普及する可能性がある。そうなれば、数と金の理論により、それがそのまま世界共通となる可能性もありえる。MasterCardのPayPassは、NFC機能付きのICカードを使うもの。カードをスライドさせるかわりにタッチするだけで、これまでとユーザー側の体験が大きく違うものではなかった。しかし、Androidスマートフォンで支払いが可能になるとすると、カードを持ち歩く必要がなく、また、アプリケーションなどでカード利用の管理なども可能になるため、仕組みは同じでも、ユーザーからは違ったものに見える可能性がある。
MasterCardのPayPass、店舗用端末。ロゴのあるところがNFCリーダーになっている |
VisaのPayWave端末。リーダーは別でも、カード処理機自体は通常のものと同じものであるため、PayPassにも対応できるようだ |
CTIAには、日本のドコモもブースを出しているが、「Mobile NFC Service」として、日本のFelica方式と海外のNFCを両立させるシステムを提案している。GoogleがAndroidで提案したNFC方式が普及するとなると、ドコモとしては対応を準備しておかねばならないからだ。
米国では、この10年で、携帯電話の利用環境や利用方法が大きく変わってきた。CTIA自体は、大きな盛り上がりがあったわけではないが、業界としては、今年も活況で、いろいろと話題を提供しそうな、「盛り上がりつつある」状況にあるといってもいいだろう。
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