「Windows 8 Media Center Pack」と「Windows 8 Pro Pack」の存在
発表されたWindows 8のエディション構成は、「Windows 8」と「Windows 8 Pro」、ARMプロセッサ向けの「Windows RT」、企業向けエディションとなる「Windows 8 Enterprise」の四種類。実質的にはコンシューマー(=消費者製品)ユーザー向けとビジネス/ハイエンドユーザー向けの二種類ととらえても問題ないだろう。しかし、シンプルになったエディション構成を複雑にする要素が改めてはっきりした。
それがアップグレードパッケージとして用意される「Windows 8 Media Center Pack」と「Windows 8 Pro Pack」の存在だ。端的に述べると、Windows 8 Pro環境に向けてはコーデックをWindows Media Centerに追加するWindows 8 Media Center Packを用意し、Windows 8環境に向けてはWindows 8 Pro同等の機能とWindows Media Centerを加えるWindows 8 Pro Packを用意。これらを追加することで完全版となる「Windows 8 Pro with Media Center」に至るというわけだ(図04)。
そもそもWindows 8 Pro上のWindows Media Centerでは、MPEG2をサポートしていないためDVDビデオなどの再生は不可能。そこで前述のアップグレードパッケージを追加することで、DVDビデオ再生はもちろんTV再生/録画などが可能になるという。ブログ記事ではISDB-T/Sと書かれているため、日本国内の衛星放送や地デジ放送にも対応するようだ。そして、Windows 8環境も前述のアップグレードパッケージを追加することで、同等の環境となる。なお、Windows Media Playerは提供されるものの、DVDビデオの再生機能は含まれないという。
アップグレードパッケージでサポートされる映像コーデックはH.264 / VC-1 / WMV(Windows Media Video) / MP4パート2、音声コーデックはDD+(Dolby Digital Plus) / AAC(Advanced Audio Coding) / WMA( Windows Media Audio) / MP3 / PCMといったラインナップ。なお、次世代サラウンド規格となるDD+に関しては、Dolby社がMicrosoftと契約を交わしたことを発表している。
各アップグレードパッケージの存在は、Windows VistaやWindows 7の低位エディションを上位へアップグレードする「Windows Anytime Upgrade」と似ているが、Windows 8では「Add Features to Windows 8」という機能を用意し、同様の仕組みが提供される仕組みだ(Windows Storeの存在が気になるところだが、こちらはMetroアプリケーション専用となる予定)。一方でこのような切り分けを行った理由として想定されるのが、ライセンスコストの問題である。そもそもOSに動画用デコーダを組み込むには、前述のDD+のように一定のライセンス契約を結ばなければならず、必然的にコスト高につながってしまう。
しかし、日本のようにWindows Media CenterによるTV録画/再生機能を必要としないユーザーも多く、同機能を活用しているユーザーは少数派に数えられるだろう。そのためMicrosoftはシンプルなエディション構成を考慮し、アップグレードパッケージを用意することに至ったのだろう。問題はどの程度の価格で、Windows 8 Media Center PackとWindows 8 Pro Packが提供されるのかという点。
よくライバル視されるMac OS Xは数千円で提供されていると持ち上げられるが、そもそもハードウェアとセットで販売しているOSを比較対象に並べることが間違いである。だが、今回のようなアップグレードパッケージを用意する時点で、過去の販売ビジネスモデルから大きく転換する可能性は少ない。それでもOSを取り巻く環境が変化しつつある現状を踏まえると、同社がどのような価格設定を用いるのかが、アップグレードパッケージの普及を左右するポイントとなるだろう。