Amiga OSをベースに誕生した「AROS」

その後のAmigaは加速的に進むコンピューターの進化に追従できず、舞台から降りてしまいますが、そのAmigaのホビーシーンを大きく支えていたのがAmiga OS(Amiga DOS)です。Amiga OSは起動用のファームウェアROMであるKickstart(キックスタート)と、デスクトップ環境となるWorkBench(ワークベンチ)のふたつで構成されており、バージョンアップ時には新しいWorkBenchと一緒にROMを配布するという、現在からすれば変わったスタイルを採用していました(図03)。

図03 初期のAmiga OS(WorkBench 1.3)。GUI風のデザインが用いられています

Amiga OSの中核となるAmigaDOSは、文字どおりディスクシステムを担う部分であり、UNIX風のワイルドカードを用いるなど、先進的な拡張を施しています。その一方でデスクトップ環境を担うWorkBenchは、Windows OSにおけるExplorerやMac OSのFinderに近い存在ととらえるとわかりやすいでしょう。名前が表すように作業台をイメージし、FDやHDDなどはWorkBench上に並び、X Window Systemの仮想デスクトップ(ワークスペース)風のマルチスクリーン機能を備えるあたりも群を抜いていました(図04)。

図04 1990年代後期のAmiga OS(WorkBench 3.1)。マルチタスクも備え、OSとしての完成度も優れていました

図05 Hyperion EntertainmentのWebページ。Amiga OS 4.1の販売が行われています

優れたOSを持ちながらも、Amiga自体がホビー向けコンピューターでしたので、Amigaを支える多くのユーザーは1990年に欧州で発売されたメガドライブ(日本では1988年)の大ヒットにより、ユーザーの移行が始まりました。また、コンピューターとしても32ビット化した上位モデルが奮わないと同時に、PC/AT互換機(現在の一般的なPC)の普及により敗戦が続きます。業績不振とは関係ありませんが、1994年にはAmigaの生みの親でもあるJay Miner氏も亡くなり、Commodore社も倒産。その後各社が新OSを搭載したAmigaの復活を試みますが、いずれも成功に至ることはありませんでした。

2001年にはAmiga OS 4の開発も始まりましたが、権利の関係から日の目を見たのは2006年。Amiga OneというPowerPCベースのコンピューター向けに開発したOSとして登場し、旧世代のAmigaで動作するバージョンも翌年に発売されました。既にAmiga Oneは生産終了していますが、Amiga OS 4自体は現在でも購入可能です。同OSを開発したHyperion Entertainment(ハイペリオン・エンターテインメント)では、125ユーロ前後(2012年2月下旬のレートで約13,000円)ですが、肝心のハードウェアが必要。実機を所有していないユーザーがAmiga OSを体験するのは難しいでしょう(図05~06)。

図06 Amiga OS 4.1のデスクトップ。Amigaの雰囲気を残しながらもカラフルな彩色が施されています