Speed、Flexibility、Adaptabilityを提供できる開発環境
-- PhoneGapやTitanium Mobileといった、オープンソースのiOS開発プラットフォームがあります。それらとは、どういった点で差別化を図るおつもりでしょうか。
エプリング:ほかのモバイル開発環境についてはあまり詳しくないのですが……iOSでカスタムビジネスアプリケーションを開発するにあたり、FileMakerプラットフォームがもっとも優れたソリューションであるという自信はあります。
多くのビジネスアプリケーションにいえることだと思いますが、開発後も柔軟に修正できるカスタムアプリケーションは大きなニーズがあります。ですが、自社向けのiOSネイティブアプリケーションをフルカスタマイズで開発が可能なリソースのある企業はそう多くありません。
FileMakerの開発プラットフォームでは、次のメリットがあります。
- 学習期間が短くて済むので、すぐに開発がはじめられる
- デザインに詳しくなくとも、スターターソリューションやテーマアーキテクチャを活用することで、美しい見た目のアプリが開発できる
- 素早くプロトタイプを開発し、公開することが可能
- FileMakerプラットフォームで開発したものは、Windows/Mac/iOSデバイスのすべてで共通のユーザインタフェース下で運用可能
- レガシーなシステムとのデータ連携・統合が容易
- 各プラットフォームの機能を活かした、ユーザにやさしい強力なアプリを開発
- 簡単に展開できるうえに、運用中のデータベース更新がオンザフライでおこなえる
FileMakerを開発プラットフォームに選択することで、Speed(スピード)、Flexibility(柔軟性)、Adaptability(適応性)をアプリケーションに持たせることができます。また、iOSでカスタムアプリケーションを展開するにあたり、特定の環境下でしか開発ができないということはありません。WindowsでもMacでも、同じ環境下で開発を進めることができます。
-- FileMaker ProとFileMaker Goは、それぞれどういった市場を目指しているのでしょう。
エプリング:FileMaker ProとFileMaker Goのそれぞれで、市場をはっきり分けているわけではありません。現代のビジネス環境では、マルチプラットフォームへの対応がほぼ必須といえる状況だと思います。
荒地:これまで通り、ワークグループアプリケーション市場でFileMakerプラットフォームを展開していくプランに変更はありません。すでにWindows環境とMac OS環境でワークグループアプリケーションを展開しています。ここに、iOSデバイスへのサポートを加えたという形になります。
私たちにとって大きなチャンスだと感じていることは、いま現在FileMakerプラットフォームをご存じでない方々の中に、iOSデバイスをビジネスで展開するにあたり、開発や運用の方法を模索しているユーザが非常に多いということがあげられます。よく忘れられてしまいますが、iPadはまだ世の中にリリースされてから2年ほどしか経過していません。お客様の中には、新しいデバイスがでてきたけれど、それをビジネス面でどのように活用できるかがすぐに思いつかない方もいます。
そんな方々に、FileMakerプラットフォームに出会っていただき、マルチプラットフォームに対応したカスタムアプリケーションをビジネスで活用していただければと思っています。
エプリング:そういった新しいユーザの方々にとって、FileMakerのソリューションを使っていただくことのメリットのひとつに、我々が20年以上このビジネスを展開しているということがあります。
我々は、多くのデベロッパ、解説書、TechNet、トレーニングパートナー、ユーザーカンファレンスなどを持っています。FileMakerプラットフォームで成功していただくために、そういった包括的なエコシステムを利用していただけます。
Android/BlackerryはWeb経由でのソリューション活用を
-- "マルチプラットフォーム"という言葉が出たところで、おそらく何度も聞かれているであろう質問を。AndroidやBlackberryといった、iOS以外のモバイルデバイスへの対応予定はありますか。
エプリング:いまのところ、AndroidやBlackberryといった、iOS以外のデバイスでFileMakerを展開していくプランはありません。ただ、最近のモバイルデバイスにはほぼ例外なくWebブラウザが搭載されていますから、iOSプラットフォーム以外ではFileMaker Web公開エンジンを経由して、FileMakerアプリケーションとの連携をおこなっていただければと思います。
-- FileMaker Server 12ではWeb公開エンジンも刷新されているようですが、どういった点でパフォーマンスが向上しているのでしょう。
荒地:まずカスタムWeb公開の同時Webセッション数が、従来の100から200と2倍になりました。また、アーキテクチャを刷新したことでメモリ処理が効率よくおこなえるようになり、社内でのベンチマークではこれまでにくらべてパフォーマンスが最大65%向上しています。
さらに、FileMaker Server 12は64ビットネイティブアプリケーションですので、多くのメモリを搭載することも可能になりました。高い負荷がかかるサーバマシンでは、サイズの大きいメモリを効率よく処理できるFileMaker Server 12へのアップグレードをご検討いただきたいと思っています。
無料化により、開発者以外にも門戸が開かれたTechNet
-- 先ほどエコシステムの話にも出てきましたが、TechNetが無料化してから以前よりもコミュニティが活発になりましたね。
エプリング:TechNetがフリーになったことで、より多くの方々が開発コミュニティにアクセスしやすくなりました。多くの参加者を迎えたことで、議論は活発になっていますね。
荒地:具体的な数字はお答えできませんが、無料化したことで桁が変わったほど、参加者は増加しています。無料化によって、FileMaker製品ラインを手にとったばかりの方々にも簡単に参加できるようになっています。
-- 有料のころのTechNetには開発者向けというイメージがありましたが、無料化して以降のTechNetは開発者だけでなく、FileMakerを使うすべての人に向けたものになっている?
エプリング:そのとおりです。意識して、そういう戦略をとりました。
もともとのTechNetは、FileMakerソリューションのプロフェッショナル、デベロッパー向けのコミュニティでした。しかし、企業内で、たとえば他の業務に従事しながらFileMakerソリューションの開発も行っている……という場合、これまでのTechNetで参加費用を会社が負担するというのはまれだったのではないでしょうか。
無料化によって、そういった企業内開発者でも、簡単に開発リソースにアクセスし、他デベロッパとのコミュニケーションがとれるようになりました。高い技術レベルを持つ開発者からの助言をもらうことができるようになりましたし、新バージョンへの移行にあたって注意すべき点などについて、相談したり議論したりといったことを、誰でも行うことができます。
今回のFileMaker Go 12を無料化したことも、TechNetを無料化したことも、戦略としては一連のものです。FileMakerプラットフォームを導入するにあたって、まずは無料のFileMaker Go 12をダウンロードしていただき、さらにFileMaker Proの体験版でFileMakerプラットフォームに触れていただく。そこからTechNetに入会し、内外のFileMaker開発者とコミュニケーションを取り、スキルの向上を図る――そのような流れでFileMakerの世界に触れてみてほしいと思います。
まとめにかえて――iOSへの志向をより強めたFileMaker 12
FileMaker 12ではファイルフォーマットが拡張され、さまざまなマルチメディアファイルを、どのプラットフォームからでもシームレスに扱えるようになった。また、FileMaker Goが無料化されたことで、iOSデバイス上でのビジネスアプリケーション市場に取り組む意志がはっきりと明らかになっている。
既存のFileMakerプラットフォームをiOSデバイスへ展開することを考えているユーザや、「iPadをビジネスに使いたい」とおぼろげにでも考えているユーザにとっては、さまざまな場面での活用が期待できる。FileMakerは、従来どおりのデータベースシステムとしてだけでなく、今後のiOS開発プラットフォームのひとつとしても、ぜひ注目しておきたい存在となっている。