元酒ライターが店主だけあって日本酒がずらり
「蕎麦前」という言葉があるように、そば屋には日本酒がつきものだ。特に最近、酒とつまみをたしなんだのち締めにそばという伝統的な楽しみ方が見直されてきている。
東京・石神井公園の「蕎麦に銘酒 野饗(のあえ)」は、まさにそんな日本酒とそば好きの人のためにある店。元酒ライターの店主・山越龍二氏がこだわって集めた日本酒と、それに合う豊富なつまみ、手打ちそばが手頃な価格で取り揃えられている。
まず日本酒は約30種類を定番として揃え、限定品も含めるとさらに多くなる。色々な種類を楽しんでもらえるようにと、100ml弱が入る5勺グラスを使い、1杯350円~という低価格で提供。熟成度の高いものや強い味わいのものが多く、中には20年ものといったレアな日本酒まであり、「こんなに安くて大丈夫? 」と思ってしまうような驚きの価格で味わうことができる。また、地元練馬の特産品にも注目し、「練馬金子ゴールデンビール(瓶)」(950円)、「練馬ブルーベリーソーダ酒」(600円)なども取り入れている。
日本酒が進むつまみの数々
つまみは、「江戸そばみそ」(350円)、「板わさ」(350円)といったそば屋のスタンダードから、「いかうに塩辛」(350円)、「れんこん饅頭」(450円)など、いかにも酒が進みそうな料理を約30種類も用意。また、地元産の低農薬栽培された野菜を積極的に取り入れており、「そばの葉天ぷら」(500円)や「九条ねぎのぬた」(500円)といった野菜のつまみも豊富だ。冷肴と日替わり料理は1品350円を基本に設定されており、おまかせで注文すると3品で1,000円、5品で1,500円になるといううれしいサービスもある。
もちろんそばにも気合いが入っている。店舗の奥に設けた製粉場で挽いた自家製粉のそば粉を使い、十割で手打ちする。製粉機は石臼の目立てまで研究したという石臼式で、中粗挽きに挽く。ふるいは18メッシュとかなり粗め。こねや切り方にも独自の研究を重ね、茹で上げ後も氷水でしめずに風味よく仕上げる。
元々のそば自体は、産地の業者や農家から直に仕入れ、丸抜きの状態で店に入れている。「まだまだそばの勉強中」という山越氏は、いまは地域なども限定せず、色々なそばを打つことを目標に、様々な地域のそばを扱っている。日単位で使うそばを変え、さらに「産地のよさを出すそばにしたい」という思いから、そばごとに麺の太さや加水率も変えている。そのため来る度に新たな味との出会いが待っている。
毎日2種類以上の異なる産地のそばを打っており、取材時には富山産の2年物と長野産の新そばを使用。それぞれの持ち味をいかした個性派のそばに仕上げていた。「もり」(800円)から、2種食べ比べができる「産地別利きそば二種(もり)」(1,200円)などがある。今後は練馬区内で畑を借り、東京在来の蕎麦栽培にも取り組むとのことだ。