図1 デビッド・フリーア氏

シマンテックでは、アジア太平洋地域に焦点をあて、個人ユーザーのオンライン活動、ネット犯罪に対する意識と行動、セキュリティ対策ソフトに対する認識と理解、利用・購買実態などについて調査を行った。調査は、シンガポール、インド、オーストラリア、中国、日本の5カ国で行われた。対象は、少なくとも1カ月に1時間以上インターネット利用している成人男女500名(各国)で、18~64歳までと、比較的幅広い層が対象となっている。

実際のフィールド調査は、2012年2月中に実施された。その結果について、レポートしたい。これまでも、同社では、世界規模での脅威分析や意識調査などを行ってきた(インテリジェンスレポートもその一例といえる)。しかし、日本固有の脅威や、日本独特のセキュリティ意識なども存在している。その具体例が、今回の調査において明らかになったともいえる。発表を行ったのは、ノートン事業部アジアパシフィック/日本地域担当バイスプレジデントのデビッド・フリーア氏である。

インターネットの利用状況

最初に分析が行われたのは、インターネットの利用状況である。人々がインターネットで何をしてきたのか?何時、誰に対して、どのような接続をし、どのようなコミュニケーションを行っているかを調べたものである。まずは、日本人の利用時間であるが、平均すると、1日7時間となった。45~64歳の層ではやや低くなり、平均5.8時間となった。これは、5カ国の中では最も少ない。ちなみに、インドは8.5時間、シンガポールでは9時間を超えていた。これは、高齢化が進むほど、利用時間も減少するので、その結果が現れたものといえるだろう。そして、どのようなサービスを利用しているかを調査した(図2)。

図2 日本人が利用するインターネットサービス

見ての通り、メール、オンラインバンキングなどの金銭的取引、一般的なブラウジングがほとんど占める。さらに、特に目的を持たず、検索を行うといったブラウジングの時間が最も長くなっている点にも注目したい。5カ国との比較では、ソーシャルネットワークやゲームなどの利用が非常に少ない。たとえば、中国では、ソーシャルネットワークに対し、日本の2倍以上の時間をかけている。ゲームについても、インド・中国では2倍以上となっている。これも年齢に関係する。高齢層が多いほど、これらの利用度が低い。日本では高齢層が多く、インド・中国などでは若年層の多いことが結果として現れたと分析する。

また、インターネットに接続可能なデバイス(PC、スマートフォン、タブレットなど)の数は、平均3台となった。これは5カ国の中で下から2番目であり、驚くべき結果となった。日本人はガジェット好きで、さまざまな最先端機器を好むと思われてきたが、まさに意外な結果といえよう。これについて、デビッド氏は、日本の住宅事情も影響するとユニークな分析をしていた。家の大きさが関係していると推察する。デビッド氏のオーストラリアでは、家族全員がPCを1台ずつ持ち、さらにPCを複数台持つことも少なくない。モバイル端末も同様である。しかし、日本では、あまり多いとはいえないと思うとのことだ。さらに、インターネットに接続できない状況を質問してみた。

図3 インターネットに接続できなくて日本人が困ること

もし、インターネットに接続できないとしたら、日本人の20%が3時間以内に禁断症状を覚えるといっている。これについては、他の国と大きな差はなかった。しかし、接続不能が24時間に及ぶとすると、半数以上が耐えられなくなるといった結果となった。東日本大震災以来、停電などで実際にそのような状況になり、多く人々がそのような苦しい経験をしたと推察されるとのことだ。実際に、接続できなくて困ることを調べたのが図3である。「仕事ができない」などは、わかりやすいものだ。また、40%以上の女性が「家族や友人と連絡がとれない」をあげていたことも興味深い結果である。