修理時間の短縮を行うための取り組みは主に6つ。「小さなことの積み上げのような取り組みもあれば、ツールの導入で大きく時間を短縮できたということもある」と、NECパーソナルコンピュータ 保守サポート事業部 東日本テクニカルセンター センター長 星野敬正氏は話す。
1点目は、荷物の着荷時間の統一だ。それまでは複数便あった着荷便を8時30分着の1便とした。荷物が到着しないと修理作業が行えない。複数本の着荷便の場合、トラックに積んでいる荷物の量にばらつきがあり、時間によっては後工程に影響があるため、着荷時間を統一した。また、外注していた製品の開梱と受付作業を内製化することで受付時間を短縮できたという。
2点目は、同社が持つナレッジを管理するシステムである「K1」を中心としたノウハウ・スキルの共有化だ。「K1」には、24,000機種のPC、10,000機種の周辺機器に関する修理データや技術データが掲載されており、この情報をテクニカルセンターでの修理や121コンタクトセンターでの問い合わせの対応などに利用している。
3点目は同社が独自に開発する総合テストツールだ。HDDテストツールやメモリテストツール、負荷テストツールなどのさまざまなテストツールを、機種や症状に応じて組み合わせてくれるという。これによって従来3.5時間かかっていた診断検査時間が1.9時間へと45%短縮した。
4つ目は、修理現場への部品配膳時間の削減と在庫部品不足の改善だ。配膳システムの処理方法の変化や部品のピッキングを少ロットで行うことで、配膳時間を短縮。また、在庫部品のメンテナンスサイクルを短縮することで、倉庫部品に欠品が起こらないようにしている。
5つ目は、ネットワークインストールを実行する際の作業や負荷を平準化している。ネットワークインストールを行う時間帯が重なると、アクセス集中による遅延が発生していた。これに対しNASの増設などで負荷を平準化した。
6つ目は、出荷する時間を1時間遅らせることで、機器の最終回収時間や梱包にかけられる時間を延長した。
熟練の修理スタッフ
そのほかに、保守をする側から開発側に品質改善のフィードバックをすることで、製品に使用されているねじの種類や本数が減少し、液晶ディスプレイやHDD、光学ドライブといった部品の交換時間が短縮できているという。
また、スタッフのスキルも重要だ。NECパーソナルコンピュータでは、1つの修理品に対して着荷してからの開梱から受付・修理・梱包まで担当する。大画面一体型PCでは、1日当たり8件から12件の修理を担当するという。
短時間で多くの修理を行うには、「早く部品の交換まで取り掛かって、時間がかかるテストを昼休みの間に実行する」ことが1つのポイントだという。修理スタッフ40人全員がIT業界における実務能力基準を認定を行う「CompTIA」の「CompTIA A+」(PCサービス専門職の必要な技術知識を認定する試験)を取得している。また、ナレッジを集めた前述の「K1」においても研修が受けられるという。
見学会の途中で、上州名物の焼きまんじゅうをかけて、熟練の修理スタッフと記者とのPC分解、組み立て対決が行われたが、結果は予想通り惨敗。記者側が分解を終えるころには、修理スタッフ側は分解、組み立てを完了しBIOSまで立ち上げているといった状況で、倍以上の速さを見せ付けられた。
サポート力をどうアピールしていくのか
サポートサービスは、非常に重要な要素だが、実際に故障やトラブルに遭遇しないとその良さが分からない。高いサポート力をアピールしようとしても、逆に故障やトラブルが起こっているかのように思われるなど、なかなか声高に主張できないという場合もある。
現在のPC市場は一部の製品を除き、スペックや価格といった部分で差を出しにくくなってきている。それだけに、今後はサービスを含めたトータルでの「製品」の存在をユーザーに認識してもらう必要があるだろう。
メーカーがユーザーに、サポートサービスとそれによる顧客満足をどのように訴求していくのか。そして今後のPC購入の際の指標として、サポートの存在ガ影響していくか注目したい。