とりわけ、AndroidはiPhoneの倍以上の制御信号を発しており、残念ながらうまく対処できているとは言えないとした。しかし、Android 4.0では改善がなされているとも説明。丸山氏は、制御信号の問題は、基本的に携帯キャリアが対処するものだが、Googleの責任も大きく、対応する必要があるだろうと述べた。
スマートフォンはネットに常時接続されているようであっても、実際にはFast Dormancyにより、切断と再接続が繰り返されている |
Android 4.0ではFast Dormancyに改善がなされている |
アプリケーションとWeb技術の変化
丸山氏は続いて、これから起こるであろう変化を解説した。まず、アプリケーションについては、現在はクラウドデバイスではネイティブアプリが主流だが、今後はクラウドベースでマルチスクリーン対応のアプリが主流になっていくだろうと予測。HTML5がその転換の鍵を握るとした。
また、ネットワークトラフィックの増大は制御信号だけが問題ではなく、Webの技術にも変化が必要だとして、HTTPに代わるネットワークプロトコルとして「WebSocket」について解説。もともと文書を転送するためにデザインされたHTTPでは、リクエストのたびにヘッダーの情報が再送され、リアルタイム性の高いWebアプリケーションでは帯域の負荷が極めて大きくなるのに対し、WebSocketでは大幅に負荷を低減できると説明した。
新しいネットワークメディアとプライバシー問題
丸山氏は、クラウドとクラウドデバイスからなる新しいネットワークメディアが躍進しているとし、自由なコミュニケーション、自由な情報共有、自由時間という志向が新しいネットワークメディアへの期待を牽引していると指摘。これから登場するコンテンツやサービスも、このような自由の志向に沿うことで成功を収められるだろうと述べた。
また、Google、Apple、Amazon、Facebookのギャング・オブ・フォー4社は、それぞれクラウドベースの音楽サービスや音楽の共有サービスを展開しており、1回だけ購入した音楽をクラウドで管理し、複数の端末で聴ける「One Cloud, Multi Device」が基本になっていると解説した。いっぽうで、これらの音楽サービスは日本では完全に展開されておらず、日本が大きく遅れていると指摘。
丸山氏はまた、自由な情報共有に関連してネット上のプライバシー問題についても言及。ギャング・オブ・フォーのプライバシー問題を取り上げたうえで、各社のプライバシーポリシーの特徴として更新スピードの早さを挙げ、プライバシーポリシーがビジネスの展開と深く結びついていると指摘した。とりわけ、プライバシーの範囲をユーザー自身が決定するというFacebookの方針が印象的であるとした。
新しいネットワーク経済の発展
丸山氏は、将来的にはすべての経済行動がネットワーク上で行われるようになるだろうと予測。そのうえで、GPSとNFCと個人の紐付けにより、クラウドデバイスが消費者行動を収集分析するための最強のマーケットデバイスになると指摘した。ただし、利用するためのスマートフォン側のアプリを作るのは簡単だが、ビジネスモデルやプライバシー保護の観点など、課題はまだ多いとした。
ギャング・オブ・フォーの中では、唯一「もの」を売る手段を持っており、ポータルデバイスとしてKindle Fireを投入しているAmazonが有力であると述べ、新しいネットワーク経済ではAmazonが先頭を走っているかもしれないと指摘。いっぽうでGoogleはGoogleウォレットによりクラウドデバイス上の電子決済市場に乗り出しており、金融の方向へ進んでいくのかもしれない、と丸山氏は述べた。
最後に丸山氏はまとめとして、クラウドとクラウドデバイスは、多数の人を巻き込んだ、新しい社会的な問題を生み出していくだろうと述べた。混沌と矛盾に満ちた未来が待ち受けているようにも見えるが、重要なことは技術の変化と発展の方向を見定めることだ、とした。また、それらが矛盾をはらみつつも、オープン、情報共有、コミュニティ、相互互恵という新しい理念を生み出していることに注目する必要があるとし、若い世代が深く考え、大胆に行動することを期待していると講演を締めくくった。
(記事提供: AndroWire編集部)