Microsoftが考えるコンピューターの近未来

さて、ここからはMicrosoftが考えるコンピューターの未来像の話をご紹介する。

Craig Mundie(クレイグ・マンディ)氏をご存じだろうか。Microsoftの最高研究戦略責任者(チーフリサーチ&ストラテジーオフィサー)を勤めつつ、オバマ政権下でUnited States President's Council of Advisors on Science and Technology, PCAST(アメリカ合衆国大統領科学技術諮問委員会)の委員に指名された人物だ。このように華麗な経歴を述べるよりも、Windows CEの開発管理に携わったと述べた方がピンと来るかもしれない(図09)。

図09 MicrosoftのCraig Mundie氏(画像は動画より)

Microsoft主催の研究プロジェクトを披露するイベント「Microsoft TechFest2012」には同氏も参加し、今年もユニークかつ将来のコンピューターを垣間見る研究結果が披露された。そこから興味深いアイデアを紹介しよう。

「Holoflector」はユニークかつインタラクティブな鏡である。鏡とディスプレイを合わせたHoloflectorに仮想的なアイテムを映し出し、ユーザーはリアルとバーチャルの区別を付けることなく、アイテムの操作や仮想的な体験を得られるというもの。紹介動画では上半身各部をフレームとして認識するデモシーンや、Holoflectorに映し出された板でボールを打つシーン、上部から雨のように落ちていくアイテムが人物にぶつかっていくさまが描かれていた(図10~12)。

図10 プレゼンターであるAndy Wilson氏の後ろに映し出されているのが「Holoflector」。人の輪郭を検知している(画像は動 画より)

図11 「Holoflector」の構造。インタラクティブな鏡がディスプレイの前に存在すると捉えるとわかりやすい(画像は動画より ) ・12

図12 「Holoflector」に描かれた仮想の板とボール。手に持ったNUIデバイスでボールを打っている(画像は動画より)

Holoflectorの開発者であるAndy Wilson氏は、複数台のデプスカメラとプロジェクターを利用し、ユーザーがタッチ可能な複数のサーフェス領域間でオブジェクトを移動できる「LightSpace」プロジェクトで有名な人物である。それだけにHoloflectorは同プロジェクトで得た技術を進化させ、より具体的な活用法につながる研究結果といえるだろう。

似たような研究結果で興味を引くのが「Behind the Screen Overlay Interactions」である。デスクトップコンピューターにおけるタッチパネルの設置は、ノート型コンピューターやタブレット型コンピューターとは異なり、人間工学的な問題が発生するため難しいものがある。それを逆手に取ったのが本プロジェクト。有機ELを用いたディスプレイOLEDを使用し、その向こうにキーボードを設置することで、ディスプレイ上に描かれたアイテムを直接手で操作するというものだ(図13~15)。

図13 「Behind the Screen Overlay Interactions」はOLEDの向こうに手を伸ばし操作する(画像は動画より)

図14 空間に手を伸ばせば、OLEDに映し出されたアイテムを直接操作できる。画面はカスケード化されたアイテムを開閉した シーン(画像は動画より)

図15 手をつまむジェスチャー操作に対応することで、OLEDに映し出されたアイテムの操作を可能にしているのだろう(画像は 動画より)