純国産のバックアップツールの新バージョン
バックアップツールの歴史は古い。コンピューター黎明期から現在まで存在し続けているだけに、基本的な機能はすでに熟成しきった分野である。それだけに差別化が難しく、バックアップ作業を行う管理者の好みや、慣習で古いツールを使い続けることも少なくないだろう。
だが、ソフトウェアベンダーは互いに修練し、利便性を高まる機能や有用性を増すための改良を施している。OSをバージョンアップにあわせてバックアップツールを更新する方も多いが、前述のような理由と利便性を踏まえれば、常に新しいバックアップツールを選択した方が生産性も高まり効率的だろう。
このような考え方に賛同する方にお勧めしたいのが、「HD革命/BackUp」シリーズの最新版となる「HD革命/BackUp Ver.12」。もともとバックアップツールはハードウェアと同じく海外ベンダーが強い分野だが、なかでも自社開発・サポートを続けている同シリーズは、数少ない国産バックアップツールのひとつ。新バージョンでは、利便性の向上を目的とした差分バックアップオプションを改良や、フォルダー単位の同期やミラーリングを行う「バックアップ3WAY」を搭載。
特筆すべき新機能は、バックアップデータからの復元時もコンピューターの操作を可能にしている点。詳しくは後述するが、バックアップデータをイメージファイル化することで、コンピューターの起動を可能にし、そこからバックアップデータを復元するという画期的なものだ。多忙なときほどトラブルが発生するのは世の常だが、同機能を使うことで復元時のタイムロスを回避できるだろう。
前バージョンでも十分完成度の高かった同シリーズだが、バックアップツールとしての精度を高め、ますます磨きがかかっている。それでは興味深い新機能を踏まえつつ、「HD革命/BackUp Ver.12」の新機能をひとつずつ確認していこう。
使い勝手のよさが小気味よいバックアップ機能
まずは「HD革命/Backup Ver.12」のバックアップに関する新機能から確認する。新たに搭載された「バックアップ3WAY」は、特定のフォルダーに対して「同期」「ミラーリング」「バックアップ」いずれかの方式を用いて自動バックアップを行う機能だ。図01は本機能をイラスト化したものだが、このように「同期」は保存元フォルダーと保存先フォルダーを指定し、両フォルダーの同期を行うというもの。例えばLAN上の共有フォルダーをネットワークドライブに割り当て、ローカルフォルダーとネットワークドライブを同期すれば、異なる場所で作業を行ってもその結果を反映させることもできる(図01)。
「ミラーリング」は保存元フォルダーに加わった変更を、リアルタイムで保存先フォルダーに反映させるというバックアップモード。任意のプロジェクト用フォルダーや文書作成用フォルダーを対象にすれば、常にバックアップが作成されることになる。例えば物理的に異なるディスクドライブ上のフォルダーを保存先に指定しておけば、予期しないトラブルが発生して一方のディスクドライブが破損してもデータが消失することはない。
最後の「バックアップ」は一定時間ごとにミラーリング処理を行うというものだが、「同期」と同じく一分から一時間まで一分刻みの実行タイミングを指定できる。また、シャットダウン/ログオフ時やWindows起動時に同期を行うことも可能だ(図02~03)。
残念ながら複数のフォルダーを設定する機能は用意されていないので、ドキュメントフォルダーなど複数のプロジェクト関連フォルダーを格納するであろう親フォルダーを指定することで欠点は補える。ただし、本機能を備えるのは「HD革命/BackUp Ver.12 Professional版」のみ。「同Standard版」や「同Basic」版には搭載されていないので注意が必要だ。
バックアップツールのメインとなるディスク全体のバックアップ機能だが、「HD革命/BackUp」シリーズでは以前からワンステップの操作でバックアップを実行する「ワンステップバックアップ」という機能を備えていた。最新版となる本バージョンでも同機能は踏襲されているが、新たにスケジュール設定を同時に行う「簡単スケジュール設定」機能が追加されている。
同機能を設定するチェックボックスをクリックするとダイアログボックスが拡大し、バックアップの実行と合わせて定期的なバックアップスケジュールを組むことが可能になった。面倒な設定を伴わず、Windowsがインストールされているドライブから別のディスクドライブへのバックアップ設定を行う「ワンステップバックアップ」は便利だが、スケジュール機能のサポートで、より強固な機能になったと言えるだろう(図04)。
なお、バックアップ機能自体は今後を見据えてGPTディスクのサポートが行われている。GPTディスクとは、これまでとは異なるディスクドライブのパーティションテーブルを採用したディスクを指す単語。インテルなどが提唱しているUEFI(Unified Extensible Firmware Interface)の一規格で、BIOSで使用しているMBR(マスターブートレコード)では2TB(テラバイト)までしか管理できないが、GPTでは最大8ZB(ゼタバイト:テラバイトの約10億倍)まで管理可能だ。
「HD革命/BackUp Ver.12」では、このOSをインストールしたGPTディスクのバックアップおよび復元に対応している。開発販売元であるアーク情報システムでは、以前からGPTディスクを各ソフトウェアでサポートしているが、ようやく本命のバックアップツールに取り込まれたのだ。現時点ではUEFIを搭載するマザーボードは普及したとは言えないものの、今後を見据えたGPTディスクのサポートは素直に評価していいだろう。