2010年1月に当時AppleのCEOだったSteve Jobs氏は、スマートフォンとパソコンの間に存在したすき間を埋める新しいデバイスとして初代iPadを発表した。それでも当時は「大きなiPod touchに過ぎない」と、その成功を危ぶむ人は少なくなかった。ところがiPadは好調なスタートを切り、またたく間に地位を確立した。そしてiPadは既存製品のすき間を埋めただけではない。あれから2年、3月7日にAppleが米サンフランシスコで開催したスペシャルイベントで、壇上に現れた現CEOのTim Cook氏は開口一番、「目覚ましい勢いで"ポストPC革命"が広がっている」と指摘した。そしてiPadが「ポストPCの世界のポスター・チャイルド (シンボル)である」と断言した。
この日のスペシャルイベントはiPadの新製品の発表会だったが、それ以上にAppleがポストPCムーブメントをけん引する企業であることを強くアピールするイベントになった。実際、同社の売上げの多くはポストPCデバイス(iPhone、iPad、iPod touch)からもたらされている。2011年の同社のポストPCデバイスの販売台数は1億7,200万台。2011年第4四半期(10-12月期)だけで6,200万台のiOSデバイスが売れた。
iOSデバイスの中で最も販売台数が多いのはiPhoneである。それなのに、なぜiPadがポストPCのポスター・チャイルドなのだろうか。それは、"ポストPC"と表現されるように、いまPC市場が縮小と言えるほど伸び悩んでおり、代わりに従来PCが使われていたところにタブレットが市場を広げているからだ。2011年第4四半期のiPadの販売台数は1,540万台。同時期のHPのPC販売台数は1,510万台でLenovoは1,300万台と、すべてのPCメーカーのPC販売台数をiPadは上回った。PCの成長のかげりを考えれば、5年前のスマートフォン(iPhone)ではなく、2年前のタブレット(iPad)の登場がポストPC時代到来のきっかけだったと言える。