常にIEを進化させるInternet Explorerパフォーマンスラボの存在
遠くない将来、OSよりもWebブラウザーの重要性が高まることは拙著「Windowsの時代は終わったのか?」でも語っているが、2012年現時点ではInternet Explorer、Mozilla Firefox、Google Chromeの三者が"三つどもえの戦い"を繰り広げている。Net Applicationsによれば、Internet Explorerは50パーセント以上のシェアを保持しているが、Mozilla Firefoxは約20パーセント、Google Chromeは約19パーセントという結果。
OSという概念が薄かった8ビット時代のパーソナルコンピューターや、Windows OS、Mac OS、Linuxといった1990年代から続くOSのシェア戦争を思い出してもわかるように、自社製Webブラウザーが主流となるか否かで、今後の戦略が大きく変化する。それだけにMicrosoftもWebブラウザーの開発は多くの人材や機材を投入しているようだ。公式ブログに掲載された記事では、Internet Explorerパフォーマンスラボの紹介が行われた。
同ラボではInternet Explorerの信頼性を高めるため、日に570万回以上の測定を行い、480GB(ギガバイト)以上のデータを収集。200回ものパフォーマンス測定を行っているという。もちろんこれらの処理はラボ内で完結しており、内部にコンテンツサーバーやDNSサーバーを設置。加えて、ユーザーが使用するネットワークデバイスを再現するためのネットワークエミュレーターを併用して、さまざまな角度からパフォーマンスダウンの原因となる箇所を洗い出しているという(図06)。
肝心のクライアントコンピューターは、Intel Core i7を搭載するハイエンドモデルからIntel Atomを搭載した低スペックモデルまで百数十台用意。二十四時間フル稼働し、前述のテストを行った結果はSQLサーバーを導入したレポートサーバーで分析が行われる。その結果を元に次世代のInternet Explorerを開発していくのだろう(図07~08)。
Internet Explorerは、今後も重要性が増すと同時にOSと共に進化してきただけに、同社の注力具合は、ほかのソフトウェアと一線を画している。普段目にすることができない同ラボの内容が面白く、今回紹介することにしたが、なかには他社製WebブラウザーからInternet Explorerに再び移行しようと思った方もおられるのではないだろうか。Windows 8の標準Webブラウザーになる予定のInternet Explorer 10は、Web標準機能への対応やパフォーマンスの更なる向上を目指し、今現在も開発が推し進められている。同OSと共にInternet Explorer 10の完成を楽しみにしたい。
阿久津良和(Cactus)