堅ろう性を高めた新しいファイルシステム「ReFS」

以前寄稿した記事で新しいファイルシステム「ReFS」の概要を述べたが、公式ブログの新しい記事で、より詳細な情報が公開された。現行ファイルシステムであるNTFSの後継に位置するのは変わらないものの、NTFSを置き換えるのではなく、今後もNTFSとReFSを併用するスタイルになる。

ReFSは、NTFSが実装していたメタデータのチェックサム、シャドーコピーを実現するためのCOW(Copy on Write)など、広く利用されている機能を踏襲。NTFSとの互換性を意識しているものの、一部の機能を含んでいないため完全互換ではない。その一方で堅ろう性を高めるため、データ書き込み時の欠落を防ぐために、"シャドーページング"と呼ばれる古典的な技術を採用し、データの検証と自動修正を行っている。

詳細を羅列すると冗長になるため、詳しくは公式ブログを参照して欲しいが、復元性のあるファイルシステムという意味で名付けられたReFS(Resilient File System)は、パフォーマンス面よりも安全性の向上が大きな特徴だ。その一方で新ファイルシステムに対する実績の少なさか、ReFSでフォーマットしたディスクをWindows Server 8用起動ディスクとして使用できず、リムーバブルメディア用ファイルシステムとしても使用できない。

ファイルシステムは通常のソフトウェアと異なり、何らかの問題が発生しても単純にリセットすればよい、というものではないため、これらの制限を設けたのではないだろうか。もっとも、ReFSは一から新規に開発したものではなく、ファイルシステムのインターフェースなどはNTFSのそれを再利用したものである。つまりReFSはレストアエンジンを新調したファイルシステムである、ととらえるべきだろう(図08)。

図08 NTFSとReFSのイメージ図。両者のストアエンジンが異なっている(画像は公式ブログより)

また、NTFSとの相違点として注目したいのが、未サポートの機能。現時点ではショートファイル名や圧縮、暗号化ファイルシステムであるEFS(Encrypting File Syste)などはサポートされず、ハードリンクやクォータ機能も見送られる予定だ。中小規模の企業でWindows Serverによるサーバー運用を行っている場合、クォータ機能の廃止は影響を与える可能性が高い。もっとも、OS側でフォルダーやユーザーグループ単位のクォートをサポートすれば解決する話なので、評価はWindows Server 8ベータ版が登場してからにすべきだろう。

前述のとおり、現時点ではWindows 8はReFSをサポートしないが、堅ろう性の高いファイルシステムを欲するのはクライアントOSも同じである。公式ブログでは、Windows 8がベータ版の間はサポートせず、ReFSの完成度が高まればWindows 8正式版で提供すると述べているので安心して欲しい。ディスク容量の制限を打ち破るStorage Spacesとデータの堅ろう性を高めるReFSは、Windows 8だけでなく今後のMicrosoft製品に大きな影響を与えていくだろう。

阿久津良和(Cactus)