日本交通はこれまで、自社開発のアプリ「日本交通タクシー配車」を提供してきており、これまでに15万近いダウンロードが行われ、1カ月で7,000件程度の配車依頼がアプリ経由で来るようになっているという。これは電話依頼の5%に相当する件数で、同社の川鍋一朗社長によれば、「1回アプリを使ったユーザーは、(電話依頼には)戻らない」ということで、順調に拡大を続けているという。
このアプリの登場で、ほかのタクシー会社よりも日本交通を選ぶユーザーがいるほか、「普段タクシーを使わない」というユーザーも採り入れられたと川鍋社長。タクシー利用のパイを広げられると自信を見せる。
日本で最初のタクシーが登場した大正元年から、来年で100周年を前に、タクシー業界は「一般の産業平均より250万ぐらい低い」(川鍋社長)という賃金体系で、利用者は減少傾向にある。マイクロソフトの樋口泰行社長も、「少子高齢化で縮小産業が多く、タクシー業界も例外ではない」と指摘する。
川鍋社長は、タクシー業界活性化のために新たな取り組みが必要だと判断。タクシー利用者の内、路上などで走行中のタクシーを止める「流し」が8割、電話配車が2割という現状では、「流しで拾われても、(同じ客に)いつまた会えるか分からない」(同)ため、きめ細かいサービスがしにくい。川鍋社長は「"拾う"から"選ばれる"時代」をテーマに、こうした状況を変えていきたいと意気込む。
タクシー業界では、これまでタクシー無線の導入で近くのタクシーを派遣するという手法が確立したが、「近くのタクシーを派遣」しても、運転手の自己申告であり、実際に近くのタクシーが配車されず、無駄なガソリンがかかるなどの弊害があった。その後、デジタル無線の導入でタクシーの現在地が把握でき、効率的な配車が可能になった。
しかし、タクシーを拾おうとする客もタクシーも常に動いている「ある意味究極のモバイル」(同)であり、客自身が移動して「ここで流しを拾う」という需要を攻め切れていなかった、という。スマートフォンの登場によって、この「ラスト1マイル」(同)を埋めることができるようになる、と川鍋社長。
日本交通には、このアプリとサービスを全国規模で展開して欲しいという要望が寄せられており、川鍋社長は、同社がカバーしていない地域のタクシー会社と連携する方法を模索。全国規模のシステム運営には、自社内でアプリ制作などに携わった7人の技術者と自社内サーバーでは対処できない恐れがあり、また降雨や台風で急増する需要への対応が難しいといった理由でクラウドサービスを選択。信頼できる大手企業を探して、マイクロソフトをパートナーに選択したという。
その後、各地のタクシー会社と交渉して、サービススタート時には10の政令指定都市をカバー。1年以内にさらに9政令指定都市をカバーしたい考えで、3年で全国のタクシー台数の30%となる6万台の配車を可能にする計画だ。
各地域のタクシー会社は、自社単独ではシステム構築が難しかったり、無線配車が年々減少しているなど、厳しい現状の中で、今回のサービスによる顧客拡大、顧客利便性向上に期待を寄せている。
川鍋社長は、タクシー業界活性化のために、「タクシーを自家用車の代わりとして使う」ようにしたいと話す。アプリに予約機能を実装することで、いつも行く場所やルートを把握しており、きめ細かいサービスをしてくれる運転手を指定する、といったことが可能になれば、運転手のサービス向上、ユーザーの満足度向上にもつながる。クレジットカードを登録しておけば、料金を支払わずに降車し、あとで請求するといったことも可能で、「自家用車、運転手代わりに使える」(同)ようになる。
また、陣痛を見越した予約、子どもの送迎、介護タクシーなど、運転手の技量に応じて予約できる「総合生活輸送産業」も目指すほか、英語や中国語などの外国語対応で、それぞれの言語が話せる運転手を派遣し、空港から直接観光タクシーになる、といった「観光立国支援」、EVかーなどの環境負荷の低いタクシーを選んで予約する「環境対策」といった方向性も提案。川鍋社長は、タクシー業界の活性化に意欲を燃やしている。
(提供:AndroWire編集部)
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