漫画原作映画が増えているのは「それだけ漫画がすばらしいということ」

――映画をご覧になる際、小堺さん流の楽しみ方などはありますか?

「できるだけ資料などを読まずに、情報量を減らして初見の気持ちを大切にすることでしょうか。それでも嗅覚というか、引っかかる作品ってあると思うんですよ。人との縁っていうけど、映画にも縁ってあるんです。悲しい映画が観たい! とか、そういう風にDNAの何かが欲しがるんですよね。時代の流れに乗って大ヒットする映画っていうのは、そういうことなんだと思いますよ」

――逆にわかる人だけ観てくれればいいという映画もありますよね

「そう、一時ミニシアター系が流行りましたよね。あれは同好の士が観ると『わかるわー』って感じなんだけど、一般の人にとっては難解な作品もある。でもやっぱり映画って大ヒットものが正しいと思うんですよ。大量生産されるものって、それだけ皆が欲しがっているわけですから」

――大ヒットといえば昨年だと『アバター』ですね

「『アバター』なんてまさにそうですよね。僕はヒットしないと思っていたけど、すごいことになった。松下幸之助さんが昔言われてたんですが、『客が欲しいものを売っちゃダメ、客のためになるものを売りなさい』って。キャメロン監督はそういう意味で芸術家でもあるけど、職人なんですよね。僕は寿司屋の息子なんですが、寿司に例えるなら、ミニシアター系の人はマグロを釣ってきたら置いて『さあ食え』って言ってるんです。でもキャメロン監督はマグロをちゃんとおろして刺身にしてくれる。その上で、『これが釣ったときの写真です』って見せてくれるんですね。日本はこういうのを客に媚びているって恥じる傾向があるんですが、僕は映画は娯楽だと思っているので、媚びているとかじゃなくてちゃんと娯楽まで成長して欲しいなと思います」

――なるほど、魚の例えはわかりやすいですね

「テレビもそうなんです。大人はBSを見ていて、地上波は若者向け。ところが若者はテレビから離れてしまっている。そういうところのさじ加減が日本はヘタなんです。説明しすぎるか、逆にしなさすぎる。アメリカの映画はそこがうまいですよね。世界発信という部分がどこかにあるからでしょうね」

「漫画原作だと知らずに観て楽しんだ作品も多いです」

――最近の日本映画では漫画原作や小説原作など、とにかく原作つきの作品が増えているように思いますが、そういった風潮についてどう思われますか?

「僕は原作がいい作品であれば何だっていいと思いますよ。オリジナル脚本が少ないっていっても、漫画だって知らない人もいるわけですし。それに生臭い話になっちゃいますけど、興行面を考えるとどうしてもね。だけどいいものはいいし、そこは憂えなくてもいいと思います。昔だって小説原作の映画とかいっぱいあるし、黒澤さんの作品だって原作は『リア王』だったりするわけですからね。漫画原作の映画が増えているっていうことは、つまりそれは漫画がすばらしいということなんですよ。黒澤さんが晩年に仰ってたんですが、今才能のある人は映画じゃなくてアニメに行くと。そういう時代なんでしょうね」

――たしかに映画になったからこその発見や面白さもあると思います

「漫画がすごいのってカット割りしてあるところですよね。漫画家さんって映画も撮れるんじゃないですか? 逆に映画監督が漫画を描いても面白いかもしれないし、漫画と映画がもっと融合していくと面白いかもしれませんね」

――最後に記事をご覧になる方や、ムービープラスの視聴者の方に向けてメッセージをお願いします

「ベスト・オブ・ベスト アワードは、ファンの方の一票でリアルな結果が出るところが良いですよね。僕もどの作品が自分にとってのベストかすごく迷ったのですが、皆さんも同じように迷いつつ楽しみながら自分のベスト映画を投票してくださると嬉しいです。番組では映画評論家の渡辺祥子さんたちと、2011年に公開された映画や最近の映画界について振り返っていますので、そちらもぜひ楽しみにしていてください!」


「小堺一機と選ぶ ベスト・オブ・ベスト アワード2011」はムービープラスにて12月11日(日)9:30~10:30オンエア。この番組で今年の話題作を振り返るほか、今年の映画界の出来事をまるごと総括。投票の際にはぜひ参考にして欲しい。投票はムービープラス公式HPの他、全国のユナイテッド・シネマに設置される投票箱、及びKDDIが提供する総合ポータルサイト「au one 映画」で12月1日から受付となる。また、投票結果の発表は、ムービープラスで2012年1月28日(土)10:15~10:45に放送される「今夜決定! これがベスト・オブ・ベスト アワード2011」で行う予定だ。