XBA-1SLからXBA-4SLまでを通して聴いてみる

下の写真は、4製品を並べたところだ。ハウジング部分のサイズがXBA-1SL~XBA-4SLという順で型番中の数字が大きくなるにつれて大きくなっているのがわかる。ハウジング部分にプリントされているマークは、ドライバーの数と、ハウジング内でドライバーがどのように配置されているのかを表している。

4モデルのサイズ比較

ドライバーの配置を示すマーク

外観を一通りチェックし終えたので、XBA-1SLからXBA-4SLまでを通して聴いてみる。今回の試聴では、USBオーディオ経由でPCに保存しているソース(音楽ファイル)を聴いている。使用しているUSBオーディオはクリエイティブメディアの「SoundBlaster LX」で、かなり以前の製品であるうえ、普及クラスのモデルだ。機能面は問題ないが、ずば抜けて高音質というわけではない。音源は、PC内に保存しておいた192kbpsのMP3形式のファイルとエンコード前のリニアPCMのファイルだ。普段よく聴いている楽曲で試聴を行った。また、比較対象として、ダイナミック型のヘッドホンでも同じ曲を聴いている。使用したヘッドホンは、オーディオテクニカの「ATH-CK7」だ。これもかなり前の製品だが、どちらかというと中高域のクリアさに特徴があるモデルで、低域はそれほど強くはない。

実際には、かなり多くの曲を聴いてみたのだが、「Spyro Gyra」のライブアルバム「Access All Areas」に収録されている「Schu's Blues」という曲で非常に各モデルの特徴が出たので、これを中心に話を進めていきたい。Spyro Gyraはフュージョンバンドなのだが、Schu's BluesはかなりJazz色が強い曲だ。ピアノのソロで始まり、そこにベースやギターなどが絡んでくるという感じの曲だ。曲の初めから1分30秒ほどで、ベースが加わってくるのだが、その部分の鳴り方が、各モデルで大きく異なる。

まずは、XBA-1SLからだ。同じ曲を聴いていても、ダイナミック型のヘッドホンで聴いていたときとは、違った印象を受ける。XBA-1SLでは、1つ1つの音がクリアに届く。中高域の解像度の高さを感じる非常にはっきりとしたサウンドだ。ヘッドホンをダイナミック型に変えてみると、楽器の音の輪郭が、XBA-1SLに比べるとぼやけているように感じられる。ただし、XBA-1SLの音の出方に、バランスドアーマチュアタイプ特有のクセが感じられることは確かだ。特に感じたのが低域の薄さだ。曲の初めから1分30秒のところで、ベースが参加してくるのだが、XBA-1SLでは注意して聴いていないと、いつ入ってきたのかがわかりにくい。ダイナミック型のヘッドホンに比べて、ベースの音がかなり弱く感じられ、ベースの弦のみが鳴っているように聴こえてしまう。

試しにPC上でSin波を発生させてダイナミック型のヘッドホンと聴き比べてみると、1kHzでは明らかにXBA-1SLのほうが再生レベルが高く、400Hzぐらいで同等、200Hzでは若干ダイナミック型のほうが再生レベルが高いかと思える程度だ。だが、130Hzあたりから再生レベルがどんどん下がっていく。100Hzを切ると、圧倒的にダイナミック型のほうが再生レベルが高くなり、50Hz以下ではほとんど聴き取ることができなくなる。

当初、SoundBlaster LXのボリュームが6の位置で試聴を行っていたのだが、試しにレベルを10にしてみる。同じボリュームでダイナミック型のヘッドホンを使用すると、低域の音圧が強くなりすぎるのだが、このレベルだとXBA-1SLのほうが自然な感じだ。XBA-1SLは、比較的ボリュームを上げ気味で使うのがよいのかもしれない。

XBA-2SLの場合も、XBA-1SLとほぼ同様の傾向だった。XBA-2SLでは、低域専用のドライバーが組み込まれているが、これによって高域がマイルドになったように感じられる。これは、ボーカルもの、特に女性ボーカルの高域部分などで、その差が顕著に現われる。XBA-1SLの高域は、XBA-2SLに比べると荒っぽい(ある意味暴力的でさえある)。ただし、それが弱点になるかというと、必ずしもそうではなく、聴くジャンルによってはXBA-2SLよりもライブ感の高さにつながるケースもあるだろう。なお、ボーカルの明瞭度は、XBA-2SLのほうが高く感じられた。

XBA-3SLとXBA-4SLは、低域用と高域用のドライバーが追加されているモデルだ。XBA-3SLでは1本、XBA-4SLでは2本の低域用のドライバーが組みこまれている。XBA-3SLで先ほどと同じ箇所を再生してみると、XBA-1SLやXBA-2SLの時とは異なり、弦だけでなくベースとしての音が聴こえてくる。XBA-4SLに換えると、さらに低域の量がアップする。ただし、2本の低域用ドライバーを組み込んだXBA-4SLであっても、ダイナミック型のヘッドホンのような太い低域再生というわけではない。引き締まった低域といった感じだ。XBA-1SLと同様に、PCでSin波を発生させて聴いてみると、XBA-3SLとXBA-4SLでは50Hz以下でも聴き取ることができたが、低域の量自体はダイナミック型ヘッドホンのレベルには届いていない。また、XBA-3SLとXBA-4SLでは、XBA-1SLやXBA-2SLに比べて、さらに中域のクリアさがアップしているように感じられる。

ダイナミック型のユーザーが使用して一番違和感のないモデルは……?

BAシリーズはダイナミック型のヘッドホンに比べると、とにかく解像度の高さが際だつ。この傾向は、XBA-1SL~XBA-4SL全てのモデルで、基本的に変わることはない。多少輪郭がぼやけるが、低域のパワーで押してくるダイナミック型とはかなり異なった感覚だ(個人的には、XBA-2SLのバランスが好みだ)。ただしXBA-1SL~XBA-4SLは、決して万能というわけではなく、ビート系の音楽などのようにダイナミック型のヘッドホンの絶対的なパワーのほうが心地よいケースもある。音楽のジャンルによって使い分けが必要だ。

実は今回、XBA-1SL~XBA-4SLのほかに、Bluetoothモデルの「XBA-BT75」も試聴している。XBA-BT75は、XBA-1SLと同様にBAドライバーを1基搭載したモデルだ。ドライバーが1基ということもあり、XBA-1SLと同系統のサウンドだろうと予想していたのだが、驚いたことに、低域に関しては低域用ドライバーを2基搭載したXBA-4SLよりも豊かだ。これはおそらく、ハウジングのサイズが他のモデルに比べて大きいという点が影響していると思うのだが、比較用に使用したダイナミック型のATH-CK7と遜色ないレベルの低域の量だ。中高域のクリアさは、XBA-1SLに届いていないという印象だったが、XBA-BT75は他のモデルと異なり、ワイヤードでの接続には対応していないためにBluetoothで接続している。また、試聴したファイルも192kbpsのMP3形式のものだけだった。これらが影響しているのかもしれない。いずれにせよ、今までダイナミック型ヘッドホンばかりを使ってきたというユーザーが使用して一番違和感のないモデルは、このXBA-BT75だろう。

ハウジングサイズのせいか、低域のパワーを感じられるBluetoothモデルの「XBA-BT75」

「XBA-BT75」には、充電池を内蔵したキャリングケースが付属する

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