――ところで、生瀬さんはサラリーマンの経験はありますか?

生瀬「ありません。ただ、アルバイト経験はありますので、人との接し方や、どうすれば人間関係がうまくいくのかということは分かっているつもりです。俳優の世界でもいろいろなやり方がありますが、僕みたいに主役ではない人間がどうやって生き残れるかというと、キチンと挨拶をして、どんなリクエストにも応えること、これに尽きます。でもこれって結局、サラリーマンにも通じるんですよね。もし自分がサラリーマンになっていたらですか? どんな職種を選ぶか分かりませんけど、たぶん上司には嫌われるかもしれない(笑)」

――本編でとても印象的だったシーンの一つが、居酒屋で会社帰りのサラリーマンたちがビールを飲んで談笑している場面でした。

生瀬「僕も試写を見た時、すごい良いシーンだと思って『あのエキストラの人たち、すごいよね』って吉田(照幸)監督に言ったら、実はエキストラの役者さんではなく『サラリーマンNEO』のファンの中から選ばれた一般の人たちだったんですよ。僕も現場では何も聞かされてなかったから、後から聞いて本当にびっくりしました。そういえばエキストラさんのように変に小慣れてなかったり、作り笑顔もしなかったりして、表情がものすごく自然だったんですよ。監督も当初はそれほど撮るつもりはなかったけど、あまりにもいい笑顔だったので慌ててカメラを回したそうです」

――大変失礼ですが、「意外に作品としてまとまっている」というのが、映画を見た正直な感想でした。

生瀬「いや、『意外と』でいいと思います。僕もそう思ってますから(笑)。『今回の作品の見どころは?』って聞かれることが多いですが、『意外ですよ』というのが的を射ている言葉なのかなと。ただ『面白いですよ』とか『笑えますよ』とは絶対に言いません。それはもう個人の自由ですからね。『サラリーマンNEO』ファンの方々はもちろん、なんとなくタイトルだけチラッと聞いたことのある人、そしてタイトルを初めて見て『どんな内容だろう』と興味を持った人……その人たち全員に言いたいです。『意外ですよ』と(笑)」

――番組が始まった当初、ここまで(劇場版公開)来るとは思っていましたか?

生瀬「いいえ。何も考えてなかったです。続くとも思ってなかったですし。もちろんこの番組に限らず、自分が関わる仕事はすべて続けばいいのにと思っていますが、この番組の場合、シーズンが終わるたびにいつも『来年はあるかどうか分かりません』って言われるんですよ。吉田監督は『上の方のアレというか判断なんで……あると思うんですけどね……』といつも言葉を濁す典型的なサラリーマン(笑)。でも、そこが面白いし、素敵ですよね」

――では最後に、なぜここまで『サラリーマンNEO』という番組が多くの人たちから愛されているのでしょうか。

生瀬「一つの理由として、吉田監督の番組に対する"愛"の強さが挙げられると思います。だって、テレビ番組なんて出演者である僕らがいくら『続けて欲しい』と言っても、そうなるものではありませんから。きっと彼の熱意が視聴者のみなさんにも伝わっているのではないかと。ただ、それもさることながら『時間をかけてじっくり番組を作る』という僕たちの姿勢を支持して下さる人が、少なからず存在したということが大きかったと思います。こんな番組(笑)を受け入れてくれる日本はホントにいい国だと思います」

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不条理に耐えながら、目標に向かって毎日を積み重ね、報酬をもらうサラリーマン。彼らの姿はある意味で日本の象徴とも言え、その風景を切り取った『サラリーマンNEO』はコントではなく、もしかしたら究極のドキュメンタリーかもしれない。こんな素敵で面白い番組は世界中のどこを見渡しても日本にしかないだろう。