――ストーリー的には男たちの骨太なぶつかり合いと、続編を感じさせる終わり方がとても印象的でした。

哀川「俺としてはむしろその前のエピソードが見てみたいね。どうして希崎がこうなったのか、こいつの"説教"はどこから始まったのか、という。必ずきっかけがあったはずなんだよね。裏社会の人間をたったひと言でピタッと止めるわけだから、昔は相当ワルいことやってるはずだよ。あと、なんで作業服なんだ、みたいな(笑)。機会があればぜひヤツの生き様をさらけ出してみたいね」

――確かに希崎は飄々としてますが、相当な修羅場というか場数を踏んでいる気がします。

哀川「そうだよね。たぶんそうじゃないとあのギラギラ感は出てこないよね。俺らもそうだけど、物事にギラギラ燃えるっていうことは、その裏で失敗も相当多いのよ。失敗した数だけギラついてくるもんなのよ。ムカついてくるとも言うけど(笑)。でも、それが"次"につながるエネルギーになるんだよ」

――「ギラギラ」とは、ある意味で怒りのエネルギーでもあるわけですね。

哀川「そう。けど、それは『どうしてなんだ!』っていう自分への怒りだよね。逆に言えば、失敗しない人はギラつかないんだよ。よくリスクがどうとか言うけど、リスクなんて本人が背負い込むものしかないと俺は思う。若いうちのリスクなんて大したことないから。歳を取れば取るほどリスクってデカくなるものなんだよ。だから若いうちは興味を持ったこと何でもやるべきだよ。それは必ず財産になるから」

――哀川さんも若い頃はギラギラしてましたか?

哀川「若い頃はその日暮らしみたいな生活してたよ。お金もらっても一晩で使って次の日50円しか残ってないとか。『まぁなんとかなるだろう。残りの日、家から出なきゃいいや』みたいな(笑)。でも、そういう生き方も今振り返ると面白いし、それなりにカタチ残してると思う。無茶な金の使い方した分、お金のありがたみも分かったし」

――では、現在はいかがですか。

哀川「俺の場合、今は逆にギラギラをどうやって隠すか、ってことを常に考えるよね。若い頃は虚勢を張ってわざとギラギラしてたけどさ、今は黙っていてもギラギラしてんだから。芝居で言えば、俺くらいのキャリアになると勝手にやっても全部『OK』になっちゃうけど、それではダメなんだよね。だから、ギラギラを隠してどんな現場でも監督の言うことを聞くようにしてる。そうやって自分を客観視するのは20代の頃からやってたね」……続きを読む。