ライブタイルはスタートメニューの進化版

前述のとおりメトロUIはタブレット型コンピューター向けのUIである。しかし、既存のデスクトップコンピューターやノート型コンピューターで使用する場合、操作性が著しく落ちてしまうのか心配になる方も少なくないだろう。だが、ライブタイルをスタートメニューの代替え機能に位置することから、数多くの機能を用意している。

例えばライブタイルにピン留めされたボタンは、大小二段階のサイズを切り替えることで、限られたライブタイルの表示領域を有効的に活用することが可能だ。例えば天気を表示する「Weather」というアプリケーションをラージモードに切り替えた場合、当日および数日内の天気や温度が表示されるが、スモールモードの場合は天気を示すアイコンのみ表示される(図05~06)。

図05 ラージモードの「Weather」。数日内の天気や温度が表示される

図06 スモールモードの「Weather」。アイコンで本日の天気が示される

また、これらのボタンは自由に入れ替えることが可能なため、使用頻度の低いメトロアプリケーションは画面右端の方に移動させ、よく使うアプリケーションを左側に並べるといった使い方になるだろう。一見すると、WinRT(Windows Runtime)ベースで作られたアプリケーションに限られるように見えるが、通常のアプリケーション(非WinRTベース)も従来のショートカットファイルと同じく、ライブタイルに貼り付けることができる(図07)。

図07 Windows 8未対応のMozilla Firefox 7.0.1をインストールしてみたが、ライブタイルにボタンが追加された

ライブタイルベースの検索機能も用意されており、[Win]キーと組み合わせるショートカットキーから、アプリケーションやファイル、コントロールパネルの設定などを呼び出すことが可能だ。本機能はスタートメニューのクイック検索に相当しているが、表示領域が制限されたスタートメニューによる同機能よりも使いやすい。また、WinRTベースで開発されたアプリケーションに検索文字列を渡すこともできるため、シームレスな検索環境を実現できる(図08~10)。

図08 [Win]+[W]キーで起動する設定検索機能。コントロールパネル内の項目が検索対象となる

図09 [Win]+[Q]キーで起動するアプリケーション検索機能。右ペインの項目を切り替えることで、設定やファイル検索も行える

図10 WinRTベースで開発したアプリケーションに検索文字列を渡すことも可能。アプリケーション側の設定で内部コンテンツも検索できそうだ

確かにデスクトップコンピューターでも、ショートカットキーを併用することでライブタイルを活用することは可能だろう。しかし、従来のスタイルに慣れたユーザーが、ライブスタイルから各アプリケーションを起動するスタイルに切り替えるのは難しいだろう。幸いWindows 8 Developer Previewには、従来のスタートメニューを呼び起こすレジストリエントリが用意されているものの、今後のベータ版や製品版に至るまで残されているとは限らない(図11)。

図11 HKEY_CURRENT_USER\Software\Microsoft\Windows\CurrentVersion\ExplorerキーにあるDWORD値「RPEnabled」で従来のスタートメニューを呼び出すことができる

同社はライブタイルをスタートメニューの進化版と捉(とら)えながらも、Windows 7までのスタートメニューの代わりになるものではない、と述べている。繰り返しになるが、Windows 8(Developer Preview時点)では、メトロUIと呼ばれるタブレット型コンピューター向けUIと、従来のデスクトップUIという二種類のUIを用意している。デスクトップUIを優先したいユーザーが、メトロUIおよびライブスタイルを無効にするスイッチを用意するのか現時点ではわからない。しかしながら、20年近く用いられてきたスタートメニューの役割は、Windows 8で終えることは確実のようだ。

阿久津良和(Cactus