新たな技術の誕生と人のちから
とはいえ、一般的な使い方であれば、ほとんど影響なくDPアニメーションを楽しむことができる。このクオリティまで詰めるまでには、かなりの苦労があったのではないだろうか。
「チューニングは相当大変でした。キャラクターの動きは、基準モデルとピン打ちした切り出し後のキャラクターを重ねることで完成するのですが、基準モデルには関節以外にも曲がるポイントを作り、不自然にならないよう調整してあります」
実は、このチェック時に活躍したのは数値データなどではなく、意外にもスタッフの目と感覚だったという。完成物を目視で確認し、違和感の有無をフィードバックし、パラメータを調整し再びレンダリングにかける。最新のデジタル技術は、地道なトライ&エラーの元で開発されていたのである。
「自動ピン打ち技術でも、例えば、腕を真横より上に上げると反応しなかったり、ピンは打てるけれど変形が不自然だったりしたので、細かな調整がずいぶん必要でした。極論ですが、汗をかかないと新しい技術も生まれないということなのだと思います(笑)。
その甲斐あってか、現在では元画像のキャラクターが"大の字"であれば、多少は外れる部分があってもほぼ対応できる精度になりました。コントラストが明快な写真ならワンボタンで切り抜けますし、陰影がよほど分かりづらい写真でなければ、スナップのような少し複雑な写真でも、それなりに対応できます。現在は人の形だけですが、近いうちに動物や自由な型にも対応できる技術の開発を進めているところです」
ユーザーの心を伝え、ともに進化するツールに
開発面、クリエイティブ面双方の可能性を模索する作業は今後も続けられる。またその一方で、ユーザー自身が作り出すネットならではの動きも開発のアイデアとして見逃せない状況にあるという。
「イメージングスクエアのギャラリーには、開発側も思い付かないようなアイデアを活かした作品が、たくさん投稿されているんです。例えば、ピン編集の仕組みに気付いたユーザーさんが、片方の腕だけピンを外してパンチを繰り出すボクサーのキャラクターを作っていたり、"大の字"以外のキャラクターに独自の方法でピンを打っていたり。また、それに驚いた他のユーザーさんも競って新しい作品を投稿してくださっていて、新たな可能性を感じています」
さらに、坂牧プロジェクトリーダーはある1つの構想を語ってくれた。
「あくまで個人的なものですが、将来はツールをオープンソース化できればと考えているんです。先ほどお話した開発用ツールを使いやすく整備して、フリープログラマーや、ニコニコ動画に投稿する神レベルの人まで広げてみたいと。XboxではKinectコントローラー用のモーションキャプチャソフトを制作する人がいる時代ですし、ギャラリーでも独自の動きがあるのですから、開発側からも可能性は作れると思うんですよね」
DPアニメーションは、ユーザーの気持ちを伝えるコミュニケーションツールとして、今後もさまざまな面で拡充が予定されている。
「携帯のデコメや動画メールなどと同じ感覚で、楽しく気楽に使っていただくことが今の一番の目標です。そのためにも、気軽で簡単なユーザーインタフェース作りを早急に行いたいと思います。また、自分や友達などを切り抜いたキャラクター画像を用意しておけば、感情に合わせたDPアニメーションが作れるワンタッチメニューも近々お披露目できるかと思います。ハロウィン、クリスマス、お正月などと、秋から冬にかけてイベントも増えてきますし、すてきなアニメーションやグリーティングカードを作ってみなさんで楽しんでいただけると嬉しいですね」