下り最大40Mbps級の高速モバイルデータ通信に注目が集まっている。高速モバイルデータ通信の先駆者であるUQコミュニケーションズの「WiMAX」、NTTドコモの「Xi(クロッシィ)」、ソフトバンクの「ULTRA SPEED」、イー・アクセスの「EMOBILE G4」とラインナップも揃ってきて、消費者の選択肢は増えている。
このほど、MMD研究所が発表した調査レポートの「超高速モバイルデータ通信サービスに関する地域別実測比較調査」で、WiMAX、Xi、ULTRA SPEEDのモバイルWi-Fiルーターの実測比較調査が行われ、3つのサービスとも首都圏・地方主要都市ではストレスがないレベルの高速通信が利用できることが示された(EMOBILE G4は調査時にWi-Fiルーター端末が未発売であったため、調査の対象にはならなかった)。このほか同調査では、実効速度やYouTube動画の立ち上げ速度、利用エリア、Wi-Fiルーター端末の使用感、バッテリー持続時間などの総合力では、WiMAXが最も優位であったことなどが示唆されている。各社とも40Mbps級のサービスを提供しているが、料金プランや利用エリア、提供する端末などが異なるため、その使い勝手も異なるようだ。
そこで本稿では、WiMAX、Xi、ULTRA SPEEDに、前述したMMD研究所の調査には加えられなかったEMOBILE G4を追加して、各社の高速モバイルデータ通信とそれぞれのWi-Fiルーターについて徹底比較してみた。サービス内容や料金プランの比較はもちろん、各社のWi-Fiルーター端末で実際に速度計測も行なっているので、ぜひご一読いただきたい。
各高速通信サービスの概要をチェック
はじめに、各社の高速モバイルデータ通信サービスの概要をおさらいしておこう。各社のサービスの概要は以下の通りだ。
「WiMAX」
~ 下りも上りも高速で端末ラインナップも充実 ~
UQコミュニケーションズが提供する「WiMAX」は、下り最大40Mbps、上り最大10MbpsのモバイルWiMAX方式を採用した通信サービス。2009年7月に正式サービスが提供開始と、各社の高速通信サービスの中では最も早くスタートしていて、2011年7月には累計契約数が110万件を突破している。
利用エリアも提供開始からの2年間で順調に拡大しており、全国47都道府県の主要都市で利用可能。実人口カバー率は、東名阪主要都市で99%以上、全国政令指定都市で95%超、全国で72%となっており、高速通信エリアが最も広い(2011年7月末時点)。
「Xi」
~ 一部屋内施設では下り75Mbps/上り25Mbpsで利用可能 ~
NTTドコモが提供する「Xi(クロッシィ)」は、下り最大37.5Mbps、上り最大12.5Mbpsのモバイル通信サービス。サービスの提供開始は2010年12月。次世代の携帯電話通信規格「LTE」を採用したサービスである。
利用エリアは2011年7月に拡大されて、全国地域に広がったが、まだ一部の都市に限られている。今後、2012年3月までに各都道府県庁所在地と政令指定都市にエリアを拡大、その時点で全国の人口カバー率20%を目指すとしている。ただし、Xiエリア外ではFOMA 7.2Mbpsエリアにつながるため、カバーエリアは広い。
「ULTRA SPEED」
~ 下り通信は42Mbps、エリア外ではイー・モバイル網に接続可能 ~
ソフトバンクが提供する「ULTRA SPEED」は、下り最大42Mbps、上り最大5.8Mbpsの「DC-HSDPA」「HSPA+」方式を採用したモバイル通信サービス。提供が開始されたのは2011年7月。
利用エリアは、政令指定都市、都道府県庁所在地をはじめとした全国の各都市となっている。ULTRA SPEED自体の下り最大42Mbpsのエリアはまだ都市部に限定されており、それ以外のエリアは「サブエリア」として、イー・モバイル網での通信となる。EMOBILE G4エリアで下り最大42Mbps(エリアにより21Mbps)、エリア外で下り最大7.2Mbps。
「EMOBILE G4」
~ 下り通信は42Mbps、エリア外でも下り最大7.2Mbpsの通信が可能 ~
イー・アクセスが提供する「EMOBILE G4」は、下り最大42Mbps(エリアによっては21Mbps)、上り最大5.8Mbpsの「DC-HSDPA」方式を採用したモバイル通信サービス。サービスの提供が開始されたのは2010年11月。
利用エリアは、関東、東海、関西、北海道、九州の一部の主要都市から提供が開始され、2011年3月末時点で全国の人口カバー率が約40%。2012年3月末までに約60%を目指すと発表している。なお、EMOBILE G4エリアであっても、エリアによっては下り最大21Mbpsとなり、EMOBILE G4エリア外では下り最大7.2Mbpsまたは下り最大3.6Mbpsとなる。
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通信速度(理論値)で比較すると、どれも下り最大40Mbps前後となっており、各サービスともに遜色はない。利用エリアについては、WiMAX以外が最新の人口カバー率などを公表していないため、単純な比較はできないが、超高速エリアではWiMAXが最もエリアが充実していて、Xiのエリアの拡大がやや遅れている印象だ。なお、WiMAX以外の3サービスでは、利用エリア外での通信をサポートするために3G通信も利用できるが、前述のMMD研究所の調査によれば「3Gレベルではまだ接続にストレスを感じる結果」だという。
提供端末では、WiMAXのラインナップが圧倒的に豊富で、様々な選択肢があるほか、Wi-Fiルーターだけでも10数種類から用途にあったものを選択できる。また、通信量が一定以上になった場合などに帯域やプロトコルを制限する利用制限がないのも、モバイル用途だけでなくメインのインターネット回線として使用することを考えると、魅力であるといえる。