――まず、本作ではふたりで監督を務められたわけですが、作業分担はどのように行ったのですか。

マーサ・ホームズ監督(以下、ホームズ監督)「最初の企画立ち上げはマイケルが行いました。そして、この企画が実際に動き出した段階で私も加わり、日々の撮影などは主に私が担当しました。その後、映像の編集段階に入ってからは、ふたりで作業していったというイメージですね。どういった映画に仕上げるかというビジョンはふたりとも理解していたので、互いの持っている強みを、いいバランスで補填し合えたと思っています。お互いに20年以上のキャリアがあるので、学ぶべきことも多かったですね」

――本作品では20種類以上の生物のリアルな生態が映し出されています。その生物の選定方法を教えて下さい。

マイケル・ガントン監督(以下、ガントン監督)「当たり前ですが、地球上には多くの動物がいるわけで、その中から、どの動物を選ぶのかというのは、非常に大変な作業でした。本作では、今までのネイチャー作品とは一線を画したものにしたいという思いがあり、それは、彼らの世界のなかにまるでいるような臨場感、体験をしてもらいたいということでした。そこで、観客を彼らの世界に引き込むためには、個性的な動物でなくてはいけないわけです。そういった条件のもと、我々が伝えたい物語にマッチする動物はなんだろう、その動物に個性はあるだろうか、画的にどうだろうか、といったことを考慮しつつ、動物を選定していきました。もちろん、実際に撮影が可能なのかということや、これまで見たことがない生き物、あるいは今まで、その生き物自体は見たことがあるけれど、動いている姿は初めて見たといった"新しさ"も意識しました」

――撮影機材や技術の進歩により、これまで以上に様々な動物の生態を撮影できるようになってきています。

ホームズ監督「まさにその通りです。ひとつ例を挙げると、今回ハキリアリを撮影したときに使った超小型HDカメラは、北京オリンピックでサッカーのゴールシーンを撮影するため、ゴールネットに付けるカメラとして開発されたものです。このカメラでハキリアリの世界を撮影することで、まさにアリの世界にいるような"体感"が得られたわけです。ハイスピードカメラに関しても、これまでは画の美しさのために使われていましたが、我々は裸眼では見えない、あるいは裸眼で見ても理解できないような映像を見せるためにハイスピードカメラを使っています。このように、どの動物を撮影する場合も、"どうやって撮影するのが最適だろうか"、"どのテクノロジーを使ったら良いのだろうか"と常に考えながら、最適な最新テクノロジーを用いながら撮影を行っています」

ガントン監督「これまでは照明を使わなくては撮影が不可能であったり、何かで生物を覆うなど、少し実際の環境をコントロールしたなかでしか撮影できなかった映像が、映像技術の進歩により、今では撮影できるようになったんです。本作に出てくる昆虫の映像に関しては、今まで野生で見ることのできなかった、ユニークでレベルの高い映像に仕上がっています」