ミキサ、ADC、DACの周波数効果

ミキサは、高い周波数信号を低い周波数信号に、またはその反対に変換するアナログコンポーネントです。ほとんどの基地局の無線カード設計では、信号をRFからIFに、またはベースバンド信号からRFに変換しています。クロックツリー設計に関して重要な問題になるのは、周波数エイリアシングです。複数の周波数が非線形デバイスを通過すると、それらの周波数間に相互作用が生じます。こうした相互作用をインター・モジュレーション(相互変調)と呼びます。

ミキサには、入力された2つの周波数を、2つの周波数の和(アップコンバート)または差(ダウンコンバート)として出力する機能があります。

今日の無線カードは、マルチキャリアである信号のリカバリを行うように設計されています。そのため、理想的な信号は、目的の信号だけでなく、対象となる周波数帯域全体にわたって等間隔で配列されます。これらの回線は、リカバリされる個々のチャネルを表します。このマルチキャリア信号はミキサのような非線形エレメントを通過するため、各チャネルは相互に変調されてしまいます。チャネルを等間隔にすることで、リカバリされるチャネルのほぼ真上に奇数次積が来るようになります。ミキサの前に置かれるフィルタは、偶数次積に寄与するノイズを低減させるために使用します。ミキサの後に置かれるフィルタは、対象となる周波数帯域から外れる相互変調積を除去しますが、帯域内奇数次積については、目的の信号に近接しすぎているためほとんど効果がありません。

ミキサの後のバンドパス・フィルタによって、不要な信号をかなり除去することができますが、サンプリング・クロック上にジッタがあれば、図2に示すようにそれらの不要な信号がスカート状に変化します。スカート状の末端においては、フィルタのパスバンド内でそれぞれ何らかの寄与をもたらします。これを広帯域ノイズと呼びます。広帯域ノイズの発生を最小にするには、ミキサ(またはADCあるいはDAC)に対して発生するクロックのノイズフロアが非常に低くなければなりません。

図2:相互ミキシングの効果

ミキサの入力に混入する、「干渉」または「ブロッカー」と呼ばれる不要な信号は、クロック信号の仕様に影響を及ぼします。これら不要な信号には、他にもシステム内部のアンテナまたは信号が受信し、受信信号パスにカップリングされるような信号が含まれる場合があります。目的の信号と周波数が大きく隔たるブロッカーはプレフィルタによって大幅に低減されますが、目的の信号の周波数に近ければ通過してしまいます。さらに、望ましい信号の平均出力が低いLTEのようなプロトコルの場合は、フィルタによって低減されたブロッカーでも、目的の信号と競合するだけのエネルギーが保持されている可能性があります。

このような影響があるため、ミキサに対するクロックの位相ノイズ特性は、可能な限り狭くする必要があります。相互に混合された位相ノイズがブロッカー上に広がることは、最小限に留めなければなりません。無線カード設計における主要な課題の1つは、ブロッカーおよびそれらの相互変調積と、目的の信号の周波数との差異が最大になるように、カード上の周波数を選択することにあります。