――たくさんの破片を集めて、そこからひとつの怪談を作り上げていくわけですね

稲川「恐竜の骨なんかもそうですよね。骨が見つかれば、大体の形がわかってくるけれど、鳴き声まではわからない。そういったことを、いろいろな状況から推理していくわけですよ。怪談も同じなんです。話の破片はいっぱい見つかるけど、それだけでは怪談にならない。似たような話の破片を集めていって、偶然ピタッとはまったときなんか、もうたまらないですね。ゾクゾクします。そういった過程を楽しみながら私は怪談を作っています。どんでん返しもあれば、ちょっと角度を変えるとまったく違う展開が見えてくるものもある。怖いのはもちろんですが、不思議さや神秘さ、そして想いが加わってくる。本当に面白いですよね」

――怪談を楽しみながら作っているわけですね

稲川「ただ、この時期になると、その楽しみが苦しみにもなってくる(笑)。なかなかパーツが見つからなかったり、やっと出来上がったと思った話が、実際にツアーで話してみたら、『あ、やっぱり違う』みたいなことになったり……。でもやっぱり、そんな苦しみも楽しいですよ」

――ちなみに怪談のストックはいくつぐらいありますか?

稲川「破片だけならすごい量ですよ。破片を書きとめた手帳だけで1,000冊ぐらい、ルーズリーフにまとめたものも1,000枚じゃきかないですね。一応分類はしているんですけど、そこから探し出すのが大変で、昔のあのネタをなんて言われると(笑)。たまっていくネタもあって、どの話に組み込むのがいいかなって考えているうちにとんでもないことになってくる。同じテーマでも、高校生の話もあれば、会社員の話もある。舞台も違ったりするので、それじゃあ一体どれが本当なのか? そうやって考えているうちに、数年間そのままになっているネタもありますね」

――どれが本当なのか? というお話ですが、やはり「本当の話」というものを追求するわけですか?

稲川「何が本当なのか? という話もありますし、別に誰かが勝手に作ってもいいと思うんですよ。錯覚かも知れないけれど、何か不思議な体験をした。それを話しているうちに、だんだん話に尾びれ背びれがついてきて、私も見た、私も見たって。見ているはずないんですよ。見たような気がするだけ。でも、そういったものがいつの間にか本当の怪談になっていくこともある。それはそれでいいと思うんですよ。だから怪談なんですよね。絶対にこうあるべきだっていうものではない。でもやっぱり本物はわかるんですよ。本物には本物の怖さがある。どこまでが本物で、どこまでが本物じゃないというよりも、どこまでが怪談で、どこまでが事件かといったほうがいいかもしれません。先ほども言いましたが、怪談は事件じゃないですから」

――ミステリーナイトツアーなどで稲川さんの怪談を聴く場合、どんな気持ちで来てもらいたいですか?

稲川「遊園地に来るような感じですね。ワクワク気分で来てもらうのが一番です。人間は、興奮しているときに一番幽霊を見る。修学旅行で怪談話が多いのは、怪談話ができるシチュエーションがあるというだけでなく、やっぱり興奮しているからなんですよ。なので、一番いいのは、身体は自然体、でも神経は興奮している。そんな状態ですね。金縛りにあうときって、身体はリラックスしているんですよ。だから動かない。決して突っ張っているわけじゃないんです。ツアーにいらっしゃるときは、ワクワクしながら来ていただいて、始まった瞬間に『待ってましたー』って大声を出してもらって……。そんな感じでいいと思います。そうやってワイワイと楽しみながら、だんだんと怪談の世界に浸っていく。それが一番いいと思いますね」

――それでは最後に、この夏に向けて、ファンの方へのメッセージをお願いします

稲川「世の中、電気があまり使えないという状況で、エアコンもつけられず、熱い夏になっていますが、だったらこのDVDを観て、ゾッと冷えていただきたい。場合によっては劇場まで来ていただいて、私の話を聴いていただく。そしてその話をまた別の人に話すことで、みんなで怖くなって、みんなで涼しくなっていただけたら、こんなに楽しいことはないですよ。怪談はとにかく楽しんでください。そして"こわ楽しい"というものを味わっていただきたいです」

――ありがとうございました


『稲川淳二の「絶叫夜話~怪奇談~」』も発売中

7月22日に『赤い部屋』と『青い部屋』の2巻が同時にリリースされる『稲川淳二の超こわい話』。それぞれ6話ずつを収録し、価格は各3,360円。また、6月29日には、BS日テレ『見てはいけないTV』で披露した怪談を集めた『稲川淳二の「絶叫(ぜっきょう)夜話(よばなし)~怪奇談~」』がリバプールより発売されている。こちらは全国のセブン-イレブン・ローソンにて期間限定発売で、価格は1,800円。

そして、夏には欠かせない究極のエンタテインメント「稲川淳二のミステリーナイトツアー2011 ~今年もあいつがやって来る~」についての詳細は公式サイトをチェックしてほしい。

タイトル 稲川淳二の超こわい話 赤い部屋
収録内容 「内田のおばあちゃん」/「NPO」/「蚊帳の屋根」/「ミニクーパー」/「ロケバス」/「郵便物」(6話収録)
発売日 2011年7月22日 品番 BCBE-4166
価格 3,360円
発売元/販売元 バンダイビジュアル
タイトル 稲川淳二の超こわい話 青い部屋
収録内容 「二階の死体」/「ヘアピース」/「44年ぶりの同窓会」/「深夜の訪問者」/「枕」/「最後の1枚~樹海~」(6話収録)
発売日 2011年7月22日 品番 BCBE-4167
価格 3,360円
発売元/販売元 バンダイビジュアル
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