わずか数十秒で過去10年分を検証
杉本氏に続いて、トレイダーズフィナンシャル調査部長の高橋謙吾氏が「スマートフォンによる自動売買取引の極意」と題して講演した。
高橋氏はまず、「なぜシステムトレードは有効か」という点を説明。高橋氏は、そもそも人間が投資に向いていない性質があり、さまざまな非合理的な判断を行うとし、機械的な判断を長期間行うことの難しさを指摘した。その例として、自らがさまざまな工夫をして裁量トレードを行って利益も上げていたにもかかわらず、夫婦げんかをしたことで冷静さを失い、それまでの2カ月間で得た利益を吹き飛ばしてしまったことを挙げた。
また、人間が投資に向いていない例として、含み益が大きくなればなるほど損切りできずに塩漬けしてしまうことや、少ない利益ですぐに利食いをしてしまうことも挙げた。
これに対してシステムトレードは、投資アイデアを機械化し、相場中は何もしないで投資が可能で、ルールに従うだけのものと説明。その結果、裁量トレードでは、成績が悪い場合、ルールそのものが悪かったのか、ルールを実行できなかったのが悪かったのか分からないのに対し、システムトレードでは、ルールが悪かったのが原因であると特定でき、ルールを修正すればいいという方向性が明確になると話した。
また、システムトレードでは、投資を始める前に、仮説を立て、過去の成績を調べ上げることが重要と指摘。PCなら、わずか数十秒で過去10年分を検証できると述べた。
戦略プログラムについては、トレードスタジアムで、数行で簡単に作れると説明。勝つためには、観察し、仮説を立て、自ら検証することが重要と強調した。自らの独創性で生き残れないなら、「勝てる師匠」を探せばいいとして、相場で勝つよりも探すほうが簡単であると話した。
高橋氏は、「仮説を立てる」ことから始まるプログラム作成のフローについて、図を用いて説明し、一時的に発生する損失に耐えられるようなシステムを作成することや、手数料を考慮してもプラスのシステムを作成する必要があるなどと話した。プログラムがどのぐらいの利益を上げられるかを判断するための「フォワードテスト」も行う必要があるとも述べた。
自動売買環境の「障害」を乗り越えるには?
これらの説明の後、自動売買環境の重要性について指摘。ネットワーク環境の障害事例として、(1)低スペックPCによる自動売買運用、(2)通信機器の故障、(3)停電、(4)回線障害、(5)プロバイダ障害、などがあるとし、使えるねっとなどのVPSを利用して自分の売買システムを登録してそこから発注すれば、自宅よりもかなり安定した運用ができると解説した。
さらに、VPSとスマートフォンを利用して自動売買を行う場合、スマートフォンをリモコン感覚で利用して、遠隔地からでも使えるねっとのVPSを操作することができると説明した。
高橋氏の講演の後、「システムトレード.com」を運営するトレイダーズフィナンシャル代表取締役社長の及川佳奈子氏が司会となり、杉本氏、高橋氏の両氏に対する質疑応答が行われた。いくつぐらいのトレードシステムを運用すればいいかという質問に対して、杉本氏は通貨ペアの相関性が少ない5つぐらいのシステムを運用することを勧めた。システムを選択する基準についての質問に対しては、杉本氏は、会社組織として何年もやっている会社が開発したシステムがよいのではないかと説明。高橋氏は、フォワードテストの成績を最重視することや、高額なソフトほどリスクが高くなることを考えて選ぶべきだとした。
また、VPSの利用料についての質問には、セミナーを共催した使えるねっとの松山功氏が回答。シルバープランだと、2年間の契約で、1カ月1,880円で利用できると述べた。
その後も多くの質問があり、VPSを利用した自動売買への個人投資家の関心の高さを示していた。