「つばめ」は九州新幹線版「こだま」!?
新八代駅から博多駅までは新規に開業した区間だ。それまでとは対照的にトンネルが少なくなり、車窓の風景は田畑や川、住宅地が中心となる。「さくら」は圧倒的なスピードで駆け抜け、やがて熊本駅に到着する。
中九州の中心都市ということもあり、熊本駅は活気にあふれ、新幹線の開業を祝うムードに満ちていた。この日は改札口そばに期間限定の風神・雷神のモニュメントも登場しており、記念撮影する観光客も多かった。
このまま「さくら」で博多駅を目指すのもいいが、やはりそれだけでは面白くない……、と思ってしまった筆者。熊本駅から「つばめ」に乗り換えた。
筆者が鹿児島に住んでいた約20年前、「つばめ」は博多~西鹿児島(現在の鹿児島中央)間の特急として登場した。使用された787系のデザインに強い衝撃を受けたのを、いまでもよく覚えている。その後も長い間、「つばめ」の名称はJR九州の"フラッグシップ"のような存在であり続けた。
JR九州の特急「つばめ」「有明」などに使用された787系は、新幹線の全線開業を機に活躍の場を九州各地に移した。おもに宮崎~鹿児島中央間を結ぶ特急「きりしま」(写真)には、元「有明」用車両が使われている |
九州新幹線の全線開業を機に、「つばめ」は各駅に停車するタイプの列車になった。東海道新幹線でいえば「こだま」といったところか。あくまで個人の印象だが、筆者にはそこが少し寂しく、時代の変化を感じずにはいられない。
鹿児島から福岡まで2時間弱、日帰り旅行も可能に
「つばめ」は新設駅の新玉名と新大牟田にも停車したが、乗車する人はまだ多くはない。車窓の風景も田畑が多く、市街地ははるか遠くに見える。新幹線の開業で、やがてこの風景も一変するのだろうか。その後も筑後船小屋、久留米、新鳥栖の各駅に停車しながら、終点の博多駅へ向かった。
山陽新幹線とつながる博多駅は、新幹線ホームが増設され、博多口(在来線ホーム側)の駅ビルが「JR博多シティ」に生まれ変わった。"九州最大のターミナル駅"としてさらにグレードアップした印象だった。
筆者にとって、福岡は東京よりも身近に存在する"都会"だったが、鹿児島からは遠かった。かつての787系による特急「つばめ」でも、博多駅までは4時間近くかかった。飛行機でも利用しない限り、日帰りは考えにくかった。
それが九州新幹線の全線開業で、最速達列車の「みずほ」なら博多駅までたった1時間19分、それ以外の列車でも2時間足らずで行けるようになった。料金が高くなるという一面もあるが、鹿児島に住んでいても、福岡まで日帰りできるようになったというのは大きな変化だと思う。
今後、鹿児島・熊本・福岡各県の関係がどう変化していくのか。そして九州と中国地方、関西地方との関係も変化していくのか。元"九州人"のひとりとして、やはり気になるところだ。
九州新幹線は19日、開業100日目を迎えた。これを記念し、JR九州では"百日(ももか)祝い"として、九州から送る「元気」応援のメッセージを30日まで募集している(専用ページより応募可能)。また、「祝!九州」CM全46種に特典映像も付いたDVDも発売されており、売上金の一部は東日本大震災の義援金に。7月1日からは九州新幹線の駅や車内でも購入できるとのこと。