PXでは十字キーの上が「プレミアムショット」の切り替えになっている。プレミアムモードというのは撮影モードのこと。通常は「風景」「ポートレート」などの、いわゆるシーンモードの選択が普通だが、PXはそれだけではない。「P」(プログラムAE)や、ミニチュアのように写る「ミニチュアライズ」、おもちゃのカメラで撮影したようになる「トイカメラ」など、フィルター機能まで並列で並んでいるのだ。これがとても楽しかった。
カメラの撮影モードは、一眼レフでおなじみの「P」「A」「S」「M」のマニュアル系モード、オートやシーンモードなどのカンタン系撮影モード、そして新しいフィルター系モードなど、いくつかに分類されるのが普通だ。しかしPXはこれをひとつにまとめたことで、シームレスにモードを切り替えられる。モードをひとつ変えるだけで、まったく違う写真が楽しめるわけだ。通常の撮影モードに戻るには、十字キーの左右ボタンを押すだけでいい。
楽しいのは、やはりフィルター系モードだった。上記のほか、白と黒に極端に分かれるモノクロ写真の「ハイコントラスト白黒」、幻想的なボカシが特徴的な「ソフトフォーカス」、現実の色とは違って写る「クロスプロセス」などが並んでいる。また、小さな物を撮る場合にはズーム位置などが自動で最適化される「拡大鏡」が便利。ただしSRズームが効いた状態になる(外すことも可能)。
このプレミアムショットは、すべてのモードが順に並んでいる状態のほかに、好みのモードを5つまで自由に配置しておける「お気に入り」が設定できる。ここをカスタマイズしておき、どんどん切り替えて撮影するのがPX流だ。
選択した撮影モードによってメニューの内容も変化する。これはモードによってユーザーまかせにできない設定があるため。たとえばホワイトバランスは「風景」や「スポーツ」では設定できるが、「ポートレート」や「パーティ」では変更できなくなる。ほぼすべての設定が可能なのは「P」だけなので、「お気に入り」を設定するならぜひ「P」も入れておこう。
また、一部の撮影モードは下ボタンに専用のメニューが割り当てられる。「料理」や「スイーツ」では色(赤や青を全体に乗せる)が調整できるし、「打ち上げ花火」では露光時間の設定が可能。「ミニチュアライズ」ではピントを合わせる範囲のほか、縦位置・横位置の変更もできる。ただし、「ソフトフォーカス」での効果の強さ、「クロスプロセス」での色合い、「トイカメラ」の周辺減光などは、十字キーの下ボタンではなく、メニューから設定する。これは下ボタンに統一したほうがいいと思う。
そして、ほとんどの撮影モードで十字キーの下ボタンで露出補正が可能だ。できないのは「花火」だけ。「ミニチュア」は下ボタンからは補正できないが、メニューから露出が変えられる。ほとんどのモードで露出が変えられるのは、とてもいいことだと思う。たとえばシーンモードなどを初心者向きのモードと割り切って、露出補正ができないカメラも少なくない。しかし露出補正は写真の基本。明るくしたり暗くすることで最適な写真にしたり、自分のイメージを写真に反映させられる。ほぼすべてのモードで露出補正を可能にしたPXは、写真が楽しくなるカメラでもあるのだ。
十字キーの上ボタンにプレミアムショット、下ボタンには露出補正が割り当てられている |
プレミアムショットの選択画面(1/2)。「P」(プログラムAE)があるのもユニーク |
プレミアムショットの残り。「MY」には下ボタンで設定したモードを登録できる |
プレミアムショットの「お気に入り」。上の全選択とは上下ボタンで切り替えられる |
プレミアムショットの「お気に入り」に楽しそうなモードを登録してみた |
プレミアムショットの選択で、ズームレバーを右に押すと説明が表示される。便利 |
プレミアムショット:P。各種設定が可能だが、絵づくりは通常撮影モードと同じ |
プレミアムショット:トイカメラ。周辺が暗くなり、おもちゃのカメラで撮ったイメージになる |
プレミアムショット:ソフトフォーカス。わざとぼやかしたような、やわらかい雰囲気 |
プレミアムショット:クロスプロセス。見た目とは色が異なる不思議な写真に |
プレミアムショット:ハイコントラスト白黒。極端なモノクロで、粒状感も表われる |
プレミアムショット:セピア。セピア色のモノクロ写真になる |
プレミアムショット:ミニチュアライズ。上下が強くぼけた、箱庭のようなイメージ |
プレミアムショット:スイーツ。まわりを白くしたま四角な写真になる |
プレミアムショット:拡大鏡。ズーム位置を最適化し、もっとも大きく撮影できる |
「ミニチュアライズ」の撮影画面。上下の暗くなった部分が強くぼけて写る |
「ミニチュアライズ」の設定画面。カメラを縦にすると、縦位置で設定される |
縦位置でのミニチュア写真。奥行き感が出やすい縦位置は「ミニチュアライズ」向き |
光と撮影モードで遊びたいタフネスカメラ
PXはなかなか楽しいカメラだった。前ページで述べたプレミアムショットもいいし、モニターに写し出される絵もきれいだった。専用のフラッシュダイヤルやセルフタイマーボタン、いつもすぐに使える露出補正など、普段は一眼レフカメラを使っている人でも、イライラせず、快適に使えるはずだ。
ハレーションが起こりやすいが、それを逆手にとって逆光で遊ぶのが楽しい。ハレた状態での絵も悪い感じではない。ハレーションをさけたいなら順光で撮ればいい。そうやって、写真にとって大切な光の向きや強さを学べるというのもPXのいいところだろう。
そして、どこでも使える安心感がある。海で水中撮影する時間はなかったが、金魚の水槽で試したところ、メリハリの効いた絵づくりも手伝って、とてもきれいに撮影できる。音声つきの動画撮影も可能だ。実際には水中撮影しないとしても、濡れても大丈夫であることや、多少の衝撃にはへこたれないタフネスさは心強い味方になってくれるはずだ。PXの正式な名前は「RICOH PX」。社名を冠するだけのことはあるカメラである。
オプションの「プロテクションジャケット」。カラーは5色が用意される |
プロテクションジャケットはやわらかく、ボディの保護はもちろん、すべり止めにもなる |
PXにプロテクションジャケットを装着。操作の支障にはならない |
オプションの「ネックストラップ」。短いハンドストラップも同梱。これも5色がある |
金魚の水槽で撮影。水の状態がいまひとつだが、そこそこきれいな水中写真 |
動画で金魚を水中撮影。音声もちゃんと記録されている |