リコーの「RICOH PX」はスタイリッシュなデザインながら、水中撮影も可能なタフネスさを備えたコンパクトデジタルカメラ。簡単に撮影モードが切り替えられる「プレミアムショット」も備えている。
RICOH PX(以下PX)は、一見したところ、ごく普通のスタイリッシュなカメラ。しかしそれでいて水中3mで60分以内の撮影ができるという、高い防水性を備えている。もちろん防塵性や耐衝撃性も高い。
底面の電池・カードカバーを空けようとすると、そのタフネスさの片鱗が伺える。カバーはきっちりシーリングされ、ロックも固め。防水のために必須の部分である。コネクターからの水の浸入を防ぐため、USB、HDMI端子も同じ場所に置かれている。
充電にもUSB端子を使用。そのため、カバーを開けたままの状態で充電することになる。オプションで充電器を使わないのなら充電はUSB充電のみとなり、付属のAC電源プラグもUSBのコネクターになっている。もちろんパソコンからも充電可能。PXをパソコンのUSB端子につなぐと、「PC接続」「プリンタ」「充電」のどれを行なうかを選択するメニューが表われる仕組みだ。
もうひとつ防水カメラを感じさせるのは、電源オンやズームでもまったくレンズが飛び出さないインナーズームを採用していること。前面はほぼ完全なフラットだ。ちなみに光学ズームは28~140mm相当となる5倍ズーム。一般的な使用には十分だろう。気をつけたいのは、前面がフラットなため、自分の指が写り込まないようにすること。特にズームの広角端では気をつけよう。
ボタン類は小さいが、節度があって操作感は悪くない。限られた数のボタンしかないのは他のコンパクトカメラに共通だが、特筆したいのは独立したフラッシュダイヤルを備えていること。どの撮影モード(プレミアムショット)でもフラッシュのオン/オフが任意に切り替えられる。水中撮影はもちろん、普通の撮影でも中途半端な自動切換よりもいい。また、十字キーの下ボタンには露出補正が割り当てられていて、ほぼすべての撮影モードで使用できる。メニューを開かなくても簡単に明るさが調整できるわけで、使い勝手はもちろん、考え方としてもとても理にかなっている。これは後でも触れたい。
また、撮影状態でメニューボタンを押すと「クイック撮影メニュー」がまず開く。始めてでもわかりやすくするためのもので、「操作音音量設定」「画質・サイズ設定」「撮影詳細設定」が並んでいる。とはいうものの、音量もサイズもひんぱんに使うものではないので、慣れてきたらメニューの「クイックメニュー表示」をオフにするのがいいだろう。通常のメニューがダイレクトに開くようになる。
スクエアで端正なスタイル。電源を入れてもレンズは飛び出さない |
横幅はちょうど10cm。重さは電池など込みで156g。しっかりした存在感がある |
液晶モニターは2.7型。明るい場所では写り込みで若干見づらくなる |
上面は電源ボタン、シャッターボタン、ズームレバーが並ぶ。電源オンで緑色に光る |
底面。電池/カードカバーのほか、三脚ネジ穴も備える |
側面にはなにもない。ストラップ取り付け部は、背面から見て右下の角にある |
防水のため、電池/カードカバーはしっかりしている。オレンジ色がロック解除の印 |
電池/カードカバーはバネで跳ね上がる。カバーのふちにはゴムのシーリング |
カバーの中。電池、メモリーカードのほか、USB、HDMIの端子も収まる |
縦横比は4:3のほか、3:2、1:1、16:9が可能。それぞれ小さなサイズにもできる |
通常撮影モードの撮影メニュー。ここからも画像サイズなどが変更できる |
「P」モードでの撮影メニュー。左のメニューよりも項目が増えている |
わかりやすくきれいな画像
電源オンからの起動は速く、待たされてイライラするようなことはない。また、電源を入れると最後に使用した撮影モードで起動するのも使いやすくていい。
ズームレバーは防水のためかストロークは短め。画面の左に置かれるズームを表示するバーは、下段が通常の光学ズーム(5倍)、その上の緑の部分がSRズーム(2倍)、さらに黄色のデジタルズームと続いている。順にズームさせると、それぞれの境界でいったんズームが止まる。デジタルズームを使いたくない場合も、境界でピタリと止められるのでありがたい。ちなみにSRズームは、画像の輪郭部分と輪郭部分以外にそれぞれ最適な画像処理を行なう画像の拡大のこと。最新の手法を取り入れたデジタルズームだ。
オートフォーカスはそれほど速くはないが、必要にして十分なもの。標準の「マルチAF」では9カ所のAFエリアからもっとも近い位置にピントを合わせる。「スポットAF」も可能だが、AFエリアは中央固定となり、任意に動かすことはできない。そのほか、顔認識や追尾AFも可能だ。
画像は、色乗りがよくコントラストも高め。わかりやすいきれいな画像だ。シャープネスも少々高め。さらに「P」モードでは「画像設定」として彩度が変更できる。
ISO感度は最高でISO 3200まで上げられるが、ISO 400で荒れが出はじめる。PXにはISO感度(オート)の上限設定が可能なので、これを利用しよう。普通の撮影でも最高ISO 800、画質にこだわるならISO 400を上限にするのがお薦めだ。ちなみに、暗い場所で撮影する際、モニターの表示が非常にノイジーになることがあるが、これは表示用に増感しているためで、画像のノイズとは関係ないので安心を。
また、水やホコリから守るための保護ガラスがレンズの前に置かれためか、ハレーションやゴーストが発生しやすい。もちろん手をかざすなどして直射日光を遮れば、ある程度抑えることもできる。しかしPXで撮影していて、ハレーションも悪くないな、と思った。記録写真として考えればハレーションはいいことではないが、雰囲気や写真のカッコよさを優先するならハーションだって味方にできる。PXのハレ具合はけっこういい感じなのだ。イヤミな感じがしない。押してくるような白のグラデーション、少し青が乗った眩しさ、ちりばめられる原色のゴースト……。たぶん偶然なのだろうけど、このハレーションなら使えそうだ。
標準のオートフォーカスモード「マルチAF」は9カ所の測距点を備える |
解像力を見るため、葉を透かして撮影。広角端を使用し、+1EVの露出補正で撮影 |
左の画像の葉の部分をトリミング(原寸)。細かな葉脈まできれいに写っている |