次にEOS Kiss X5の新機能を中心に、撮影機能をチェックしてみよう。EOS Kiss X5のいちばんの特長であるバリアングル液晶は、ひとつ上のクラスに位置する「EOS 60D」とほぼ同じもの。左右に最大175度まで、上下に最大270度まで回転でき、ライブビューを表示することで、ローアングルやハイアングルからの撮影を気軽に行える。
ライブビューは、ボディ背面の専用ボタンを押すことで起動し、最大10倍の拡大表示やヒストグラム表示、グリッド表示などに対応する。アスペクト比を4種類から選ぶことも可能だ。ライブビュー時のAFについては、コントラストAFが作動する「ライブモード」と「顔優先ライブモード」、位相差AFが作動する「クイックモード」の3方式から選べる。
バリアングル液晶は非常に便利であり、構図の自由度を広げる意味で、実用性の高い装備だと感じる。ライブビューの視認性も十分なレベルだ。ただ残念なのは、コントラストAFの合焦スピードが従来モデルとあまり変わらず、のんびりしていること。本機に限らず、多くの一眼レフ機に共通した弱点であり、課題といえる部分だ。静止した被写体ではライブモード(コントラストAF)、動体撮影ではクイックモード(位相差AF)と、使い分けるようにしたい。
バリアングル液晶と並んで、EOS Kiss X5ならではの大きな特長は、「シーンインテリジェントオート」モードを搭載したこと。これは、従来の「全自動」モードを強化したもので、撮影シーンの自動解析に対応したフルオートモードである。被写体の色や明るさ、動き、顔の有無などが総合的に解析され、その情報に基づいて、絞り値やシャッター速度、ホワイトバランスといった各種の設定が最適化される。たとえば、風景撮影なら青空や緑がいっそう鮮やかに、人物撮影なら肌色が自然に仕上がるようになる。
発色傾向を調整する機能「ピクチャースタイル」も従来機から進化した。これまでの「スタンダード/ポートレート/風景/ニュートラル/忠実設定/モノクロ」のほかに、「オート」を選択可能になった。このオートでは、撮影シーンに応じて自動的に色を最適化できる。
付加的な機能としては、撮影した画像に特殊加工に施す「クリエイティブフィルター」を搭載した。選べるフィルターは、白黒のハイコントラストになる「ラフモノクロ」、ぼかしを加える「ソフトフォーカス」、オモチャのカメラで撮影したような「トイカメラ風」、風景をミニチュアのように見せる「ジオラマ風」、丸いゆがみを加える「魚眼風」の計5種類だ。
ビギナー向けの配慮としては「機能ガイド」を搭載した。これは、撮影モードを変更したときや、撮影機能/ライブビュー撮影/動画撮影/再生時のクイック設定などの際、機能や項目を説明するテキストを液晶表示する仕掛けだ。
さらに、初級者から一歩上に進みたい人向けには「表現セレクト」機能を搭載。絞りや露出補正などの専門的なことを知らなくても「くっきり鮮やかに」や「ふんわりやわらかく」といった項目を選ぶだけで、イメージに近い写真を撮影する機能だ。
動画については、従来機と同じく最大1980×1080ピクセルのフルHD記録に対応。動画のマニュアル露出やデジタルズーム、外部マイクの使用もできる。また、1回の撮影で数秒(2/4/8秒)の短い動画を記録する「ビデオスナップ」機能を新搭載。テンポのいいショートムービーを作成したいときに役立つだろう。
以上の機能のうち、「シーンインテリジェントオート」「ピクチャースタイルオート」「クリエイティブフィルター」「ビデオスナップ」「マルチアスペクト」はEOS Kiss X5のみで、EOS Kiss X50には搭載されていない。「機能ガイド」と「表現セレクト」は両機ともある……後編へ続く。