ボタン1つで切り替えられるケータイモードでは、別途TI製OMAP(クロック数非公表)を搭載しており、Windowsとは別のCPUでSymbian OSを動作させている。ケータイモードでは既存のフィーチャーフォンでカバーされた多くの機能をサポート。ワンセグをのぞいておサイフケータイ、iコンシェル、ドコモマーケット、iBodymo、GPS、Bluetooth、FOMAハイスピードなどに対応する。
また、おまかせロックやケータイお探しサービスなどのiモード向けセキュリティ機能もサポートするほか、富士通ケータイでおなじみの「スーパーはっきりボイス3」、ブルーレイディスクレコーダー連携、エクササイズカウンターなども搭載する。
ケータイモード時は、通常のiモード機と同様に、iモードサイトやiモードメールも利用可能。電話としてももちろん利用可能で、Windows 7モード時でも電話が着信すると自動的にケータイモードに切り替わり、終話後にWindows 7モードに復帰する、という動作をする。Windows 7モード時におサイフケータイが使えるかどうかについては「使えるはず」(説明員)ということで、確実な返答は得られなかった。
それぞれ個別のプロセッサで動作しているため、モードを切り替えてもそれぞれのOSは動作している。Windows側は標準のOS設定で指定した時間が経過するとスリープや休止状態に移行するが、Symbian側はそのまま常時起動しているため、切り替えはすぐに行える。
両OSの間の相互の連携は難しく、例えばBluetoothやGPSはケータイモードでしか利用できない。microSDカードの共有は可能で、いずれかで保存したデータを、別のOS側がmicroSDカード経由で取り出すことはできる。
別売でクレードルも用意し、そこに搭載したUSB・HDMIを使ってキーボードやマウス、外付けHDDなどを接続、画面をテレビに出力して据え置き型のPCのように利用することも可能。クレードルのUSBやHDMIはWindows 7モードでしか利用できないので、クレードル利用時はWindows 7モードに切り替える必要があるそうだ。
主なスペックは、本体サイズは125(H)×61(W)×19.8(D)mm、約218g。連続待受時間は3Gが約600時間、GSMが約400時間、連続通話時間は3Gで約370分、GSMで約440分。液晶は約4インチワイドSVGA(1,024×600ドット)TFTで、タッチパネルは静電式。外側カメラは有効画素数約510万画素CMOS、内側カメラは同約32万画素CMOSセンサーで、Windows 7モード時は約17万画素になる。外側カメラは、Windows 7モードでは利用できないという。
外部メモリはmicroSDカードで、赤外線通信、Bluetooth(以上、ケータイモードのみ)、無線LAN(Windows 7モードのみ)を搭載する。バッテリ容量は1,400mAh。
Windows 7モードでは、CPUはAtom 1.2GHz(600MHz駆動)、メモリ1GHz、SSD 32GBを搭載し、バッテリ駆動時間は約2時間。IEEE802.11b/g/nの無線LANをサポートし、3G通信も可能だ。
富士通では、PCと携帯の部門を統合したユビキタスプロダクトビジネスグループを創設、PCと携帯を融合させた組織を作り上げている。F-07CはPC部隊が中心になりつつも、従来の携帯部隊も参画して開発してきたという。同社の執行役員副社長・佐相秀幸氏は、PCやタブレット、スマートフォン、携帯の垣根がなくてってきていて、Windows、Android、Chrome OSなどのいろいろなプラットフォームが登場しており、「ユビキタスデバイスの大きな変革期を迎えている」と指摘。現在は、「PC-98からDOS/Vにシフトしたのと同じぐらいの潮流が起きて潮目が変化している」状況だと話す。PCと携帯部隊を融合させたのは、こうした状況を乗り切るための「PCビジネスの意思の表れ」(佐相氏)だという。
パーソナルビジネス本部長の斉藤邦彰氏は、F-07Cの開発においては「携帯とPCの融合が1つのキーワードだった」と話し、F-07Cは「ケータイとPCのいいとこ取り」の端末だと強調する。この端末によって、オフィスや自宅、移動中でも活用できる、「ライフパートナー」を実現する端末を目指したそうだ。
今回の製品を実現するためには、CPUだけで1.5Wを実現し、熱設計にも工夫を凝らすなど、さまざまな努力を盛り込んで完成させたとのことで、斉藤氏は「富士通だからこそできた世界最小PCではないか」と胸を張る。
パートナーとして紹介された日本マイクロソフトの樋口泰行社長は、世界最小のWindows PCであることを「まさに日本の匠の技」と称賛し、Windowsのソフト資産を有効活用できる上に形態として利用できるという「新しいポジショニングの製品」だとアピールする。 インテルの宗像義恵副社長は、今後数多くの端末がクラウドコンピューティングに接続していく中、インテルの目指す「コンピュート・コンティニュアム」の新しい時代に向かった端末だとして大きな期待を寄せる。
斉藤氏は、来年にも登場が計画されている次期OSの「Windows 8」のARM対応版も含めたマルチプラットフォームの製品を今後も計画していく考えで、海外向けにはSymbianではないOSを搭載した製品も検討していく。斉藤氏は、PCと携帯を融合させた同社の「象徴」(斉藤氏)の端末として、今後も育てていきたい考えを示している。