100MHz×50倍、5GHzでのPCMark 05完走に成功
ではCPUとマザーボード以外で実際にオーバークロックを試す環境を紹介しよう。今回は空冷でチャレンジする。とはいえリテールクーラーでは冷却能力不足も考えられるので、筆者の手元にあるクーラーで望む。自前のカスタムものだが、ヒートシンク部はサイズの「兜」。3ブロックに別れたヒートシンクと6本の6mmヒートパイプで冷却性能はなかなか良好だ。加えてプッシュピンタイプなので、ベンチマークで着脱機会の多い筆者にとって標準クーラーとして利用している。ただし、ファンについては冷却能力アップと静音性能の向上を狙い、標準搭載の12cm径のものから、同じくサイズから販売されているサーマルライトの14cm径ファン「TR TY-140」に変更している。CPUクーラーのファンは、クリップ式やネジ式が一般的で、簡単に交換できる。色々と試す中で良いヒートシンクとファンの組み合わせを見付け出してみるのも自作の楽しみ方だ。
オーバークロック手法に関しては、そこまで本格的に行うわけでもないので、Windows上のユーティリティから行った。P8P67にはASUSTeK製の統合ユーティリティ「ASUS AI Suite」が付属しており、このなかにオーバークロックツール「TurboV」も含まれる。P8P67上のTurboVで設定できるのは、ベースクロック(BCLK)とCPU電圧、DDR電圧(メモリ)、そして「その他の設定」をオンにすることで、CPU動作倍率やさらに細かな各部電圧が設定可能となる。とはいえ、今回調整したのはBCLKとCPU動作倍率、そしてCPU電圧の3項目だけだ。他の項目もチャレンジしてみたが、今回のオーバークロックではあまり効果が得られていない。また、P8P67の場合、CPU動作倍率はTurbo Boost時のクロックを設定するイメージになる。Core i5-2500Kでの標準値は37倍からスタートするので、ここをスタート地点としてオーバークロックを進めていくことになる。ではその結果をご覧いただきたい。
Windows上からオーバークロックできるTurboVを使用。BIOSと比べると設定項目が少ないが、マウスでドラッグして適用ボタンを押すだけの手軽さはオーバークロックを身近なものとしてくれる。Auto Tuningという自動オーバークロック機能も搭載 |
今回のオーバークロックにおける成功可否はFeature Testを含むPCMark 05の完走で判断している。そしてその結果が上記のグラフだ。成功したなかでの最大クロックは100MHz×50倍の5GHz。その際の電圧は、1.35Vと設定したが、CPU-Zからは1.44Vと表示されている。この設定における5GHz駆動は比較的安定していたのだが、ここから51倍に設定すると、コア電圧を調整しても動作が安定しなかった。
さて、再びグラフにもどると、OverallであるPCMarksが荒れているが、これは主にグラフィックススコアがバタバタしているためである。動作クロックが影響したというよりはベンチマークを繰り返したことによる熱の影響と思われる。肝心のCPUスコアにフォーカスしてみれば、動作クロックの引き上げに合わせてリニアにスコアが上がっていることが確認できた。CPUスコアは、3.7GHz時を100%とした場合で5GHz時が135%。この135%という値は実クロックの上昇率とぴったり合致している。BCLK側をいじっていないため、非常に分かりやすい性能向上と言えるだろう。同時にメモリスコアも向上しており、システムパフォーマンスに関してもオーバークロックすればするだけ向上していくのが体感できる。
一方、BCLKによるオーバークロックにもチャレンジしてみた。先に倍率変更によるオーバークロックで5GHzを達成しているため、まず50倍設定から101MHzに引き上げたところ結果はブルースクリーン。それではと49倍から5GHz超となる102.5MHzを試してみても、OSの起動自体に問題は無かったがベンチマークを完走するまでには至らなかった。結局、100MHz×50倍の、お作法に沿ったオーバークロックが最高クロックという結末だ。いちおう40倍程度にまで落とせば102MHz超でもベンチマークが完走したものの、先の5GHzのスコアと比べれば特に見るべき値ではない。
なお、海外の情報からはBCLK 106MHzでの起動に成功したとの報告もある。だから今回駄目だったからと言ってBCLKによるオーバークロックの可能性を否定することはできない。さらに電圧設定を詰めたり、あるいはオーバークロック用として販売されているマザーボードを選べばまだ上があるのかもしれない。とはいえ、それは保証されるものではないし、現状ではかなりハイリスクな賭けであると言わざるをえないだろう。